さて、試算に話を戻します。Kさんは健康管理のためにアルバイトに転職して労働時間を短縮し、手取収入を正社員時代の6割5分程度(130万円)に抑えるとします。

 一方、ご主人の収入が変わらず450万円であれば、世帯年収は580万円です。

 年間支出を192万円のままとすれば、年間の黒字額は388万円です。Kさんが正社員だった頃よりも減少しますが、年間収支が黒字であることに変わりはありません。

 この場合も、飲食業の平均開業資金を上回る1164万円(388万円×3年)を、わずか3年間で調達できます。予定の5年後より早くお店を開業できるでしょう。

開業資金を思い切って
「2500万円投下」する前提で試算

 ただし、調査で示された平均額はあくまで目安です。Kさんは相談文に「開店資金はなるべく多く残しておきたい」と書かれていますし、平均よりも多くの資金を投じて、お店の立地や設備、デザインにこだわる可能性もありそうです。

 この調査でも、開業資金に2000万円以上かけたケースが全体の約11%を占めています。そこで今回は、開業資金は思い切って2500万円とします。

 この際、開業に当たって銀行からの借入を行うと、月々のローン返済が家計を圧迫し、お店が軌道に乗って利益が出るまでに時間がかかると思われます。

 そのため、今回は開業資金をキャッシュで支払い、なるべく借入を行わない前提で試算します(詳しい試算は割愛しますが、冷蔵庫などのリースは行っても大丈夫です)。

 開業の予定は、予定よりも早い3年後のままとします。この時点での貯金額は、もともとの資産である5000万円に、ご夫婦がこの3年間でためた1164万円を追加した6164万円です。

 そこから開業資金2500万円を差し引くと、残りは3664万円です。開業した時点でKさんは53歳、ご主人は47歳になっています。

 開業してからのお店の収支は、甘く試算することも、厳しく試算することもできます。新型コロナウイルス感染拡大によって飲食業界は打撃を受けているので、今回の試算はやや厳しめにしたいと思います。

 お店が生み出す利益を、開業1年目は0円、2年目は50万円、3年目は100万円、4年目は150万円と仮定します。5年目以降は200万円が継続するとします。お店の規模が分からないため、少人数で楽しむお店として考えてみました。

 ご主人が開業した後は、このお店の利益を「年収」に置き換えて試算します。