独立開業後すぐに
黒字化できるとは限らない

 Kさんがその後もアルバイトを続け、手取り年収が130万円のまま変わらないとすれば、開業1年目の世帯年収は130万円です。2年目は、ご主人の収入が50万円に増えるので180万円です。

 このペースで、開業3、4、5年目の世帯年収は230万円、280万円、330万円に上がっていくとします。

 世帯年収は順調に伸びていますが、開業前よりも下がっているのは確かです。また、年間支出も従来の192万円から増えてしまいます。ご主人の国民年金、国民健康保険料の負担が加わるためです。その額を年間25万円とすれば、年間支出は217万円になります。

 先ほど示した、開業後の世帯年収の変化に照らして試算すると、開業1年目の家計収支は87万円の赤字。2年目は37万円の赤字です。

 3年目にやっと黒字転換し、13万円の黒字を確保できます。4年目の黒字額は63万円、5年目以降は113万円となります。

 貯蓄額の推移も見ていきましょう。先ほど試算したとおり、開業資金を支払った後の残高は3664万円です。開業1年目は87万円の赤字ですから、その額を取り崩した残金は3577万円。2年目も37万円の赤字なので3540万円です。

 3年目で13万円の黒字に転換するので、その額をプラスして3553万円。4年目は63万円の黒字なので3616万円。5年目は113万円の黒字なので3729万円になっているでしょう。

 あくまで推測ですが、ご主人の開業から5年後(Kさんが58歳)の時点で、ご夫婦の貯蓄は3729万円だと考えられます。

 ご主人のお店が安定して黒字を出せるようになったので、Kさんは体調を考慮して58歳でアルバイトを辞めるとします。

 この場合、当面の世帯収入は、お店から得られる200万円のみとなります。一方、Kさんにも国民年金などの負担が加わるため、年間支出は240万円に増えます。

 Kさんが65歳になるまでの7年間の収支は、年間収入が200万円、年間支出が240万円ですから、年間40万円の赤字です。累積赤字額は、7年間で280万円に拡大します。