ペナルティーとしてボーナスを減額されていた
昼休みが終わり、AはC総務部長の元へ駆け込んだ。
「部長、今日支給されたボーナスの件でお伺いしたいことがあります。同僚のB君と同じ仕事をしているのに、彼より15万円も安いのはどうしてですか? 計算間違いではありませんか?」
不満をぶちまけるA。話を聞き終えたC総務部長はいったんその場を離れると、Aの人事考課表を持って再び現れ、その内容を確認した上で言った。
「A君、ウチの会社の冬のボーナスの査定期間は、4月1日から9月30日までなのは知ってるよね?」
「はい、就業規則にも書いてあります」
「管理課長の報告によると、君はその間に無断欠勤2回、遅刻を8回もしている。そのせいで取引先との打ち合わせが再三キャンセルされた。おまけに管理課長が何回注意しても改善されなかった。私もその事実は確認済みだ。君の行為は、本来ならばクビになってもおかしくないところだが、ウチの会社も人手不足だからそこまでするつもりはない。その代わりペナルティーとしてボーナスを減額させてもらったよ」
Aは今年の春から、戦闘系のオンラインゲームにハマり、休日はほぼ一日中、会社から帰宅後も夜通しでプレーを続けていた。そのせいで朝寝坊をし、遅刻や欠勤が増えた。管理課長からはそのたびに厳しい注意をされたが、Aは意に介していなかった。
欠勤や遅刻分は給料から引かれているのに、さらにボーナスも?
C総務部長の返答に、Aは激しく抗議した。
「でも、欠勤とか遅刻をしたときはその分を給料から引かれています。その上ボーナスまで減額とは……それってひどくありませんか?」
「就業規則の記載通り、君が遅刻などで働いていなかった時間分、月給から差し引くのは当然だ。それとは別に、無断欠勤や遅刻は会社のマナーに反することだからペナルティーを科したということだよ」
「じゃあ、ボーナス額を決めるときに、欠勤1回、遅刻1回ごとにいくら減額すると決まっているんですか?」
「決まりはないよ。第一、ボーナスの査定基準を社員に教える必要はないだろう? もういいから、早く自分の席に戻りなさい」
Aが部屋を出てから、C総務部長は急に不安になった。
「ボーナスからの減額は甲社長とも相談して決めたけど、もしかして15万円は引きすぎだったかな? そうだ、明日D社労士が別件で訪ねてくるから、その時に聞いてみよう」