労働者性を判断する上で
基準となったポイントは?

 そして今回、都労委は労働組合法に基づき、配達員は「労働者」であると“満額回答”で認定し、ウーバーに団体交渉に応じるよう命令した。

 労働者性を判断する上で、重要な基準となったポイントは、(1)事業組織への組み入れ、(2)契約内容の一方的・定型的決定、(3)報酬の労務対価性、(4)顕著な事業者性――の4点だ。

 事業組織への組み入れとは、配達員がビジネスにとって不可欠な労働力として確保されているか、を判断する。組み入れがあれば「労働者性がある」とみなされる。

 ウーバーはインセンティブを設けて配達の需要が多い場所・時間帯に配達員を誘導している。また、配達員は個人名ではなく「ウーバーイーツ」を名乗って注文者や飲食店を訪問している。これらのことなどから、都労委は「事業組織への組み入れ」はあると判断した。

 ちなみにウーバーの配達員は全国で13万人以上とされるが、都労委によれば、ウーバーの業務で生計を立てている人は約2000人。配達業務を「本業」とする人は全体の25%を占めるという。そのため、都労委は「専属性」も強いと判断している。

(2)契約内容の一方的・定型的決定とは、仕事や報酬の内容をウーバーが一方的に決め、定型的な契約書式かどうかを判断する。配達員に交渉の余地がなければ労働者とみなされる。

 この点について、配達員が締結している「ウーバーサービス契約」はウーバーが用意した定型的様式であり、契約内容を配達員が個別に交渉して決定することはできない。

 また、配送料の変更を要請する権利が書かれた条項はあるが、実際には交渉の余地がなく、アプリにはウーバーが決定する金額以外の選択肢は表示されない。個別に交渉できる仕様にもなっていない。これらのことから、都労委は「契約内容の一方的・定型的決定」があると判断した。

(3)報酬の労務対価性とは、業務量や時間に応じて配達員に支払われる報酬が、労働を提供した対価であるかどうか、である。労務対価性があれば労働者とみなされる。

 ウーバーは時間帯や場所、配達回数の達成などのインセンティブによる追加報酬を出しているが、これは「配達員が自ら提供した労務への対価」としての性格を持つと都労委は判断した。

(4)顕著な事業者性とは、自己の才覚で利得する機会を有し、自らリスクを引き受けて事業を行う者であるか、どうかを判断する。

 事業者性があれば労働者ではないが、ウーバーは注文者や飲食店と不必要な接触を禁止しており、配達員は自らの才覚で利得する機会がない(個人の裁量による営業活動はできない)。また、配送事業の損益はウーバーが負担しているので、自らの業務にリスクを負っているとはいえない。

 したがって配達員は顕著な事業者性は持っていない、と都労委は判断した。

 以上、4つの判断軸すべてにおいて配達員は労働者と認定されたが、これでウーバーの配達員の処遇が改善されるわけではない。あくまで労働組合として交渉する権利(会社は交渉に応じる義務)を得たにすぎない。