社会保険が適用になると、毎月のパート収入から健康保険料が天引きされ、手取りは減ってしまう。だが、万一のときは、納めた保険料に応じた補償が受けられる。特に、傷病手当金と出産手当金は、休業前の給与を基に支給額が計算されるので、給与が高いほど、もらえる手当金も高くなる。

 目先の保険料ばかり気にして、社会保険の適用を避けていると、万一のときの保障が手薄になってしまう。いざというときに充実した保障を確保したいなら、年収の壁にこだわらずに、より多くの収入を得られる働き方を目指すのが賢明だ。

これからのパート探しは「付加給付」が
健康保険についている企業がおトク

 さらに、勤務先の健康保険に「付加給付」があれば、万一のときの安心材料が増していく。

 労働者のための健康保険には、「全国健康保険協会(協会けんぽ)」と、「組合管掌健康保険(組合健保)」の2つがある。

 協会けんぽの前身は、国が運営していた「政府管掌健康保険」で、主に中小企業の労働者のための健康保険を運営する全国組織だ。都道府県ごとに支部があるが、受けられる保障は全国一律で、法律にのっとって給付が行われている。

 一方、組合健保は、従業員数700人以上の企業が、国の認可を受けて独自に運営する健康保険で、同業種の複数企業が集まって共同運営しているケースもある。こうした組合健保のなかには、法律で決められた給付に加えて、独自の保障を上乗せしている付加給付のあるところも多い。

 たとえば、高額療養費の法定給付は、70歳未満で一般的な所得の人は、【8万100円+(医療費-26万7000円)×1%】。医療費が100万円だった場合は、約9万円が限度額になる。だが、付加給付のある組合健保のなかには、所得に関係なく、高額療養費の限度額が一律に2万円といったところもある。

 また、傷病手当金の法定給付は、日給の3分の2で、支給期間は通算1年6カ月だが、日給の85%を、最長3年間支給してくれる健保組合もある。