NISAのイメージ画像Photo:PIXTA

2023年度の税制改正大綱の発表が近づくにつれ、NISA(少額投資非課税制度)の改革案の詳細が少しずつ漏れ伝わってきている。その「新しいNISA」が普及するかどうかの鍵を握るのは、これまで指摘されてきた若者ではなく、「50代」であると筆者は考えている。(経済評論家、楽天証券経済研究所客員研究員 山崎 元)

「新しい資本主義」
唯一の光明が見えた

 穴の空いた大風呂敷に、一つだけ宝石が包まれていた。率直な印象はそんな感じだ。

 何のことか。初めから悪い冗談としか思えなかった岸田文雄首相の「新しい資本主義」は、検討を重ねるほどに問題設定の悪さが露呈していつまでたっても中身がない。

 しかし、おそらく首相の思いつきから出た(正確にはふと耳に入った言葉を繰り返したのだろうが)「資産所得倍増計画」を具体化するための「新しいNISA(少額投資非課税制度)」がなかなか良いものになりそうなのだ。

 制度の細目や、運用益が非課税になる運用資産の額などは、今週中にも発表される税制改正大綱で明らかになるだろう。ただ、これまでの報道をつなぎ合わせると、制度そのものも税制優遇の「枠」も、庶民レベルの資産形成ニーズから考えて「ほぼ満額回答」といえるものになりそうだ。首相の言葉を最大限に利用して、具体的な制度に落とし込んだ関係者の努力に感謝したい。

 制度的には、恒久化、無期限化、簿価による投資枠管理、新旧分離などが実現しそうだ。これまで時限措置の積み重ねだったNISAの将来の継続を心配せずによくなるし、一般NISAで5年、つみたてNISAで20年だった非課税運用期間が無期限になり、長期投資に耐えられるようになった。