長い間、日本のスポーツ界の体質を表わす言葉として使われてきた「体育会系」の価値観が見直される時が、ついに来たのかもしれない。

 大阪・桜宮高校バスケットボール部の体罰問題で日本の世論が沸騰している最中、柔道日本女子代表のパワハラ指導が発覚。そうした指導の根っこにある「体育会系」の体質を疑問視する声が高まってきているからだ。

日本人の気質に合っていた!?
「体育会系」の指導に見直しの機運

「体育会系」とは日本の運動部(スポーツ選手養成組織)につきものの厳しい上下関係を象徴する言葉である。厳しい上下関係は、下は少年野球、中学・高校の部活動にも見られるが、それを象徴的に表す「体育会」は大学の運動部のことだ。大学には学内で認められ活動費などの補助が出る課外活動がある。大きく分けて運動系の体育会と文化活動系の文化会で(大学によって名称は異なる)、体育会にはその競技のスペシャリストが集まり、インカレや大学選手権、大学対抗戦などで大学の名誉をかけて戦う。

 大学の予算を受け、名誉をかけて戦うのだから当然、統制は厳しい。体育会を表わす表現に「4年神様、3年貴族、2年平民、1年奴隷」というものがある。大学の体育会運動部に入るのは高校ではトップレベルの競技者が多いが、1年生はそんな実績は通用せず、振り出しに戻る。競技力が劣る上級生だったとしてもその命令には絶対服従。掃除、洗濯、買い物などの命令には奴隷のように従わなければならない。また、各部には伝統的なしきたりがあり、たとえば飲み会では酒が弱くても一気飲みなどを強要されるといったものだ。

 そんな厳しい仕打ちに1年間耐え、2年になると少し待遇は改善され平民になる。それを1年耐え3年になると命令できる立場になって貴族、さらに4年になるとなんでも思い通りに下級生がしてくれる神様になるというわけだ。その過程には今、問題になっている理不尽な命令や暴力まがいのお仕置きなどもある。