子育てや仕事が終わってふと我に返る
「老後を安泰に過ごせるのだろうか」

「最近、家の1階と2階を上り降りするのがつらい」「子どもが独立して1人で暮らしているため、生活が何かと不便で困る」

 年をとるにつれて、誰もがこのような悩みを抱えるようになる。少子高齢化が進む日本では、2010年からの10年間で、現在約2900万人いる65歳以上の高齢者人口が、約3600万人へ激増すると言われる。

 特にインパクトが大きいのが、団塊世代だ。2025年には彼らが一斉に後期高齢者になるため、日本の人口の5人に1人が75歳以上となる。まさに「超高齢時代」の到来である。

 団塊世代の多くは、若い頃に汗水たらして働き、子どもを育て、日本発展の屋台骨を支えた。しかし、子どもが結婚して自立し、定年を迎えて仕事からも解放され、いよいよセカンドライフを楽しもうと思ったときに、多くの人はふと我に返る。「このまま老後を安泰に過ごせるのだろうか」と。

「失われた20年」と呼ばれる長引く不況の中で、余生を送るために十分な資金を維持できるかどうかは不安だが、冒頭で触れたように、彼らの最大の懸念は「安心して暮らせる住環境」を確保できるかどうかだ。

 その不安を象徴するように、今の日本には独居老人や高齢者だけの世帯が増えている。今後10年間で高齢者の単身・夫婦世帯は約1000万世帯から2割以上増加する見通しだ。元気なうちはまだいいが、問題は体が思うように動かなくなったらどうするか。誰かの介助・介護が必要になったときに、頼りになる身内が周囲にいないのは、不安この上ない。最近増えている「孤独死」のニュースに、危機感を募らせる人も多い。

 不動産市場に詳しい石澤卓志・みずほ証券チーフ不動産アナリストによると、こうした不安を抱える人が多いためか、近年、郊外の一戸建てから都心のマンションや老人ホームなどに引っ越す高齢者が増えているという。