年間の新車販売台数が957万台と、1年前の6割にまで落ち込んでしまった米国で、韓国・現代自動車の躍進が話題になっている。

 1月の乗用車販売台数実績では、ゼネラル・モーターズやフォード・モーター、クライスラーのみならず、トヨタ自動車やホンダ、日産自動車までが軒並み前年同月比3~6割超も落ち込むなかで、現代自動車だけが1割以上も販売台数を伸ばしているのだ。

 人気の秘密は、「ヒュンダイ・アシュアランス」という破格の保証プログラム。1年以内に、失業や死亡、けが、海外への引っ越し、自己破産などのアクシデントに見舞われた場合、買ったクルマを返却すれば、残ったローンのうち、7500ドルまではチャラになるのだという。しかも、年齢や健康状態、職歴などを問わず、誰でも利用できる。

 現在、未曾有の不況に見舞われている米国では、16年ぶりに失業率が7%を超え、回復の兆しは見えないまま。先行きへの不安がふくれ上がり、国民の消費意欲も冷え込んでいる。

 そこに、「7500ドルあげますよ」と言っているに等しい大胆な販売施策が出たのだから、消費者が飛びつくのも無理はない。

 しかし、このプログラムは現代自動車にとって、諸刃の剣でもある。

 前述したように、販売台数の押し上げには効果テキメンだが、もしクルマを返却する購入者が続出すれば、当然ながら損失はかさみ、自らの首を締めることにもなりかねない。

 かつて北米では、三菱自動車が頭金・最初の1年間の支払い・利子をゼロにする「ゼロ・ゼロ・ゼロ・キャンペーン」で低所得層にアピールし、販売台数を伸ばしたが、急激に返済が滞り、最後は“自爆”した経緯がある。

 その三菱自動車をさらに超える現代自動車の太っ腹ぶりからは、崖っ縁まで追い詰められた自動車メーカーのヤケクソぶりが透けて見える。

(『週刊ダイヤモンド』編集部  津本朋子 )