橘玲の日々刻々 2013年2月14日

橘玲×藤沢数希 特別対談
「金融幻想の終わり」を語る!(2)
日本の金融ビジネスの現場

ヘッジファンドと投資銀行、どっちがいい?

藤沢 それは「大企業で働くのと自分で起業するのと、どちらがいいか」というのと同じで、やっぱり投資銀行に残るほうが有利だと思います。投資銀行のトレーダーが立ち上げたヘッジファンドが10社あったとしたら、7社ぐらいは3年以内に潰れて、2社はギリギリ生き残り、1社が成功してお金持ちになるぐらいのイメージです。

 それもまたすごい世界ですね。

藤沢 ある意味、そちらのほうが健全ですけどね。ヘッジファンドの世界は報酬がまた凄くて、今、世界には1万5000社以上のヘッジファンドがあるんですけど、上位10社ぐらいを見るとトップの報酬って1000億円単位なんですよ(笑)。

 それを理解するのはなかなか難しいですね。ただ、そういう現実を知ると、賢い人たちが金融の世界に引き寄せられていくのは、わかるような気がします。

藤沢 社会としては、金融機関が優秀な人材を集めすぎているというのは、ある意味で深刻な問題です。英国では、数学や物理やコンピュータの分野で優秀な人材は、みんなシティの金融機関に就職するんです。米国でも特に理系の優秀な人材は、みんなヘッジファンドか投資銀行です。

 そうやって金融業界に優秀な人材が集まっても、実力が発揮できるのは数パーセントでしょう。もったいないですね。

藤沢 言うなれば、才能のある人たちが集まってみんなでマージャン大会やってるのと同じなんです。結局、トレーディングってゼロサム・ゲームなんで。どこかで面白い記事を読んだんですけど、米国では大恐慌の後に金融機関がボロボロになってから、優秀な人たちがみんな自動車とか電機とか製造業に行ったそうなんです。それでいろんな産業が育って、米国の黄金時代の基礎を築いたという。

 じゃあ『外資系金融の終わり』が、新たな経済成長の始まりになるかもしれませんね。これまでは、金融機関の報酬がとにかく桁違いに高かったから、製造業とかは「なんでそんな賃金で働かなきゃいけないの」と思われても仕方がないないところがあった。少しはならされますかね。

藤沢 報酬の歪みによって長期的な経済成長率が落ちるというのは、結構問題だと思ってるんです。日本を見ると金融機関もそうだし、規制業種の給料が高すぎますね。通信会社とか電力会社とか。

 テレビ局や新聞社もそうですね。これも規制業種。

藤沢 規制によって守られた業種や公務員の給料が、国際競争のある民間セクターよりも高いというのは、非常によくないことなんですよね。

 最近は、将来なりたい職業の1位が公務員らしいですからね(笑)。藤沢さんは、どうして研究者の道から、金融に進まれたのですか?

藤沢 僕の場合は自分の給料を上げたかっただけで、ほとんど迷いはなかったですけど。僕はもともと物理をやっていたんですけど、物理も面白かったけど金融もものすごく面白そうで。でも、金融のほうが給料がものすごく高かった。面白さが同じぐらいで給料が高かったら、チャンスが与えられれば「金融のほうがいい」ってなりますよね。

 誰だってそう考えますよね。でも、外資系金融機関だと「いつクビになるかわからない」っていう不安はないんですか?

藤沢 それが意外に思われるかもしれないですけど、外資系金融のほうがはるかに安定してるんですよ。アカデミックな研究職ってパーマネントな契約にならない限りは、米国でも日本でも、基本的に2年契約なんです。2年ごとにクビになるのと同じです。金融機関は外資系でも基本はパーマネントで雇われるし、解雇されるときにも割り増し退職金をたくさん貰えます。しかも、転職もしやすい。それでお給料は段違いにいい。だから報酬とかジョブ・セキュリティに関しては迷いませんよ。

(第3回に続く)

 

●橘 玲(たちばな あきら)

作家。「海外投資を楽しむ会」創設メンバーのひとり。2002年、金融小説『マネーロンダリング』(幻冬舎文庫)でデビュー。「新世紀の資本論」と評された『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』(幻冬舎)が30万部の大ベストセラーに。著書に『黄金の扉を開ける賢者の海外投資術 究極の資産運用編』『黄金の扉を開ける賢者の海外投資術 至高の銀行・証券編』(以上ダイヤモンド社)などがある。最新刊『不愉快なことには理由がある』(集英社)が発売中。ザイ・オンラインとの共同サイト『橘玲の海外投資の歩き方』にて、お金、投資についての考え方を連載中。

 

●藤沢数希(ふじさわ かずき)

 欧米の研究機関にて、理論物理学の分野で博士号を取得。科学者として多数の学術論文を発表した。その後、外資系投資銀行に転身し、マーケットの定量分析、トレーディングなどに従事。 おもな著書に『なぜ投資のプロはサルに負けるのか?』『日本人がグローバル資本主義を生き抜くための経済学入門』『外資系金融の終わり』(いずれもダイヤモンド社)がある。ツイッターのフォロワーは7万人を超える。

 

(撮影/和田佳久 構成/渡辺一朗)


 

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 <執筆・ 橘 玲(たちばな あきら)>

 作家。「海外投資を楽しむ会」創設メンバーのひとり。2002年、金融小説『マネーロンダリング』(幻冬舎文庫)でデビュー。「新世紀の資本論」と評された『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』(幻冬舎)が30万部の大ベストセラーに。著書に『黄金の扉を開ける賢者の海外投資術 究極の資産運用編』『黄金の扉を開ける賢者の海外投資術 至高の銀行・証券編』(以上ダイヤモンド社)などがある。ザイ・オンラインとの共同サイト『橘玲の海外投資の歩き方』にて、お金、投資についての考え方を連載中。


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橘 玲(Tachibana Akira) 作家。1959年生まれ。早稲田大学卒業。「海外投資を楽しむ会」創設メンバーのひとり。著書に『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』『(日本人)』(幻冬舎)、『臆病者のための株入門』『亜玖夢博士の経済入門』(文藝春秋)、『黄金の扉を開ける賢者の海外投資術』(ダイヤモンド社)など。
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