静岡鉄道長沼駅に着くと(JR東静岡駅からだと徒歩で8分ほど)、壁面のガラス越しに大きなガンダムの絵が見えるバンダイホビーセンターが姿をあらわす。ここは、2006年に旧静岡工場(静岡ワークス)より移転、稼働を開始した、『機動戦士ガンダム』のプラモデル=ガンプラの聖地である。

 宇宙コロニーをイメージさせる近未来的な建物は、ガンダムと同じ高さ18メートル。カーブを描く壁面に配置された大型のソーラーパネルは、年間5万6000kWhの太陽光発電を行っている。

 ホビーセンターの従業員は、なんとガンダムに出てくる地球連邦軍のような制服姿。トイレは白・青・赤・黄のガンダム・カラー。工場内にはザク(ジオン公国軍のモビルスーツ)風の無人フォークリフト。射出成型機の塗装はホワイトベース(宇宙空母)のよう。そして、あちこちに宇宙コロニー的なデコレーションが施されている。

 周知のとおり累計販売数が4億個に迫るガンプラは、ガンダムというキャラクター事業を象徴するものであり、プラモデル業界でも突出した存在感を示している。1979年にアニメがTV放映され、最初のガンプラ(1/144ガンダム)が発売されたのはその翌年のこと。以来30年近く売れ続け、年々ファンは増え、特に近年はブームと呼ぶにふさわしい盛り上がりを見せている。ヨドバシカメラ秋葉原店ではガンプラが大きな売り場を占めているほどだ。

 じつはバンダイホビーセンターはこの熱心な顧客に対応すべく、商品企画、開発から生産、顧客サポートまで、顧客の心つまりエモーション重視の体制を敷いている。筆者もこの5月に訪問したが、まさに感動し、こうして書くことで感動を伝播するに至っている。

 これまで4回にわたり、新たな企業モデルの鍵としてエモーション×コミュニケーションについて議論したが、今回は、特にエモーション重視の例として、ガンプラで知られるバンダイのホビーセンターをとりあげたい。

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部品一つに妥協しない匠の世界に顧客も感動

 バンダイホビーセンターは、単なる人気キャラクター商品の供給拠点ではない。「技術の進化・発展」、「地球環境との共生」、「感動創造」という三大テーマを掲げ、顧客への対応だけに満足せず、こだわりの強い彼らの期待を上回ることでさらなる感動をもたらそうと日々貪欲に取り組んでいる。その姿勢は、バンダイ社長がホビーセンター訪問時に「やりすぎ」と評したほどである。