このように、投げかける質問への回答自体に意味を持たせるのではなく、その反応を見て人柄などを見るのだ。

 諜報心理を利用した情報収集術とは、こちらから仕掛けるものに加え、反応を見るための手段=質問を用意し、相手の反応から心理を読み解く手法である。ぜひ活用してほしい。

 これまで諜報心理を利用した人材の見極め方について解説してきたが、諜報心理はある意味「各論」に過ぎず、情報収集の基本は信頼関係の構築にある。

 採用活動においては、応募者と懇切丁寧に信頼関係を築いたとしても、内定を辞退されることは当然ある。採用側からすれば、その心理的な負担は大きいだろうが、それは応募側の権利である。「信頼を裏切られた」などと諦めず、引き続き、応募者たちとの信頼関係の構築に注力しなければならない。

 また、自社内で定義された要求事項を今一度思い返し、それに資する情報収集を心掛けてほしい。

 諜報活動においては、プロ中のプロであるスパイが情報収集を行うわけだが、そのプロでさえ、情報収集の前提である信頼関係構築のために地道な努力を重ねており、そのプロセスを省くようなことは一切しない。

 応募者および採用企業双方が、満足のいく成果を得られることを心から願う。

(日本カウンターインテリジェンス協会代表理事 稲村 悠)