「体育会系マネジメント」は、集団を統率するうえできわめて強力な管理手法ですから、その信奉者が現われるのは当然です。運動部やオリンピックチームで体育会系マネジメントが好成績を収めているのなら、「暴力はよくない」と全否定してもなんの効果もありません。
石原氏とともに日本維新の会の共同代表を務める橋下大阪市長は、体罰自殺問題で市立高校体育科の入試中止と部活動の停止を指示しましたが、体罰が日本の文化から生まれてくるものならば、特定の学校や教師に懲罰を加えたところでなにも解決しません。
体罰問題の本質は、学校別運動部という閉鎖社会にあります。これを抜本的に解決するには、すべての学校の運動部を廃止して、Jリーグの下部組織のようにスポーツは地域のクラブが担うようにするしかありません。
生徒の側に選択の自由が与えられているのなら、「きびしくも愛情あふれる指導」を売りものにするクラブがあってもいいでしょう。体罰がたんなる指導者の自己満足だと思えば、子どもたちは別のクラブに移っていくだけです。
そのうえで優秀なスポーツ指導者が、「体育会系マネジメント」でなくても勝てるチームはつくれるし、金メダルを取れる選手を育てられることを事実として示さないかぎり、この国の「体罰神話」はなくならないでしょう。
『週刊プレイボーイ』2013年1月12日発売号に掲載
『日本の国家破産に備える資産防衛マニュアル 』
作家・橘玲が贈る、生き残りのための資産運用法!
アベノミクスはその端緒となるのか!? 大胆な金融緩和→国債価格の下落で金利上昇→円安とインフレが進行→国家債務の膨張→財政破綻(国家破産)…。そう遠くない未来に起きるかもしれない日本の"最悪のシナリオ"。その時、私たちはどうなってしまうのか? どうやって資産を生活を守っていくべきなのか? 不確実な未来に対処するため、すべての日本人に向けて書かれた全く新しい資産防衛の処方箋。
<執筆・ 橘 玲(たちばな あきら)>
作家。「海外投資を楽しむ会」創設メンバーのひとり。2002年、金融小説『マネーロンダリング』(幻冬舎文庫)でデビュー。「新世紀の資本論」と評された『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』(幻冬舎)が30万部の大ベストセラーに。著書に『黄金の扉を開ける賢者の海外投資術 究極の資産運用編』『黄金の扉を開ける賢者の海外投資術 至高の銀行・証券編』(以上ダイヤモンド社)などがある。ザイ・オンラインとの共同サイト『橘玲の海外投資の歩き方』にて、お金、投資についての考え方を連載中。
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