株高下でも進む
国債への集中投資

 いわゆるアベノミクス効果とされる円安・株高効果で、日本企業にもやや明るさが戻りつつあるように見受けられる。

 しかしながら、この株式相場の中で株式の売買主体を見ると、少し違った風景が見えてくる。昨年12月から本年1月の東証1部の投資部門別株式売買状況(金額ベース)を見ると、総額では273億円の買い越しとなっているが、その内訳は、外国人が約2兆7000億円の買い越しなのに対し、国内法人は約2兆円の売り越し、国内個人が約7000億円の売り越しになっている。

 この国内法人の売り越しの中身は、金融機関が1兆9000億円の売り越しであり、その中で都銀・地銀が売り越したのは800億円程度なので、残りは、生損保や年金等の売りである。つまるところ、このところの株高を演出しているのは外国人投資家である反面、本来、長期投資によって日本企業を育てていくべき国内の生損保や年金は、売りに転じているのである。筆者は、銀行と企業の株の持ち合いには従来から批判的なので、都銀・地銀の売り越しは是とする。

 一方、含み損を抱えていた生損保や年金は、やれやれといった感じで売りを増やしているのだろうが、これには強い違和感を覚える。国内投資家は、株式を筆頭とする「リスク資産」を減らし、国債にシフトする、いわゆる「リスク・オフ(リスク回避)」傾向をずっと続けているが、それでは、1500兆円の家計部門の金融資産は、ROE(株主資本利益率)目標のない国(政府)に還流し、非効率に使われるだけで、企業の活性化には繋がらない。

 家計部門のネットの金融資産が、ほぼすべて国や地方の借金に充当されており、企業の成長に全く使われていないことは、2年以上も前の連載第1回で既に指摘したことであるが、その状況は、変わらないどころか、どんどん悪化しているということである。無論、これを裏から読めば、だからこそ、大量の国債の消化が円滑に進んでいるのであるが、本当にそれでいいのだろうか。