日本の人口は今、何人くらいか、君は知っているかな。2010年の国勢調査を見てみるとだいたい1億2806万人。でも、この人口はこれからどんどん減ってしまうんだって。

国立社会保障・人口問題研究所では、将来の人口について3つの見方で予測を立てている。このうち、「中位推計」――出生や死亡の見込みが中程度と仮定した場合の予測――を見てみると、2030年には1億1522万人、さらに2060年には8674万人となっている。これは、第二次世界大戦直後の人口とほぼ同じ規模だ。

どんどん人口が減り、縮んでいく日本の社会。いったい私たちの行く手には何が待ち受けているんだろう?

――この連載では、高齢になった未来の私たちのため、そしてこれからの時代を担うことになる子どもたちのために、日本の将来をいろいろな角度から考察していきます。子どものいる読者の方もそうでない方も、ぜひ一緒に考えてみてください。

超優秀な留学生を
青田刈りする国・シンガポール

 高校生の春奈(仮名)は15歳のとき、たったひとりでシンガポールに渡った。以来、ホームステイしながら、現地のインターナショナルスクールに通っている。そんな頑張り屋さんの彼女もいよいよ受験生だ。

 とりあえず、いくつかの大学を訪問してみた。そのうちのひとつが、“シンガポールの東工大”といわれるNTU (Nanyang Technological University:南洋工科大学)。留学生の合格率はわずか8~9%。中国、インド、マレーシア――アジア中の秀才たちが集まってくる。NUS(National University of Singapore:シンガポール国立大学)やSMU(Singapore Management University:シンガポール経営大学)などと並ぶ超難関校だ。

 いったい学費はどのくらいかかるんだろう?

「通常なら、留学生の学費は年間200万円ほど。でも、政府が学費援助してくれるので、その半分で済むんです」

 こう語るパク・スックチャさんは、日本生まれで韓国籍を持つビジネスウーマンだ。ダイバーシティ(多様性)とワークライフバランスの企業コンサルタントとして幅広い活動をしており、多数の著書を持つ。

「ただし、政府の援助を受けるためには、『卒業後3年間はシンガポールの企業で働く』のが条件。3大学に入学するほとんどの留学生はこれを受け入れ、卒業後はシンガポール企業に就職していきます。狭き門を潜り抜けた超優秀な留学生を大学入学の時点で確保している、というわけですね」

 パクさんは『恐れ入った』と言いたげに、首を振った。

「このままだと、日本は20年経っても彼らに追いつけないわ」