生徒の進路は文系・理系が約4割ずつ。その他にも芸術系や実技系といった分野に進む生徒がいるなど、進路は幅広い。
学校はあらゆる手を尽くして、生徒それぞれが多様な選択肢から自分に合った進路を選ぶきっかけを提供する。大学から講師を招いて研究分野の話を聞く会や、卒業生による講演を定期的に実施するなど、生徒がキャリアについて考える機会は多い。着物の着付けや美術、バレエといった多彩な30講座がそろった土曜講座も用意している。23年春、日大芸術学部に合格したある生徒は、美術系予備校に通わず、この土曜講座の美術の学びだけで合格したという。
23年1月には、順天堂大学と教育連携協定を締結した。それによって今後は、医療・健康・国際教養分野を中心に、キャリア教育などを充実させ、医療や健康について多様に学べる機会を加えていく予定だ。
こうした豊富な体験機会を通じ、生徒が「自分で決めた」進路希望を実現するためのサポートも手厚い。例えば、薬学部に進みたい生徒が願書の書き方で迷っていたときには、薬剤師として働く卒業生にも助言を依頼。卒業生は後輩のために喜んで協力してくれたという。そして教員は、生徒の苦手分野や性格を熟知した上で、個別指導を実施する。
「『オーダーメイド』で生徒の受験に寄り添うため、教員は生徒一人一人の受験までのストーリーをよく覚えています。生徒たちは卒業後もよく学校に顔を出してくれるので、その後どういう人生を歩んでいるかも私たちは知っています」と河村校長は目を細める。
指導よりもサポートを
生徒・教員は皆顔見知り
それぞれの個性を熟知した生徒との対話は、日々の学校生活でも随所で見られる。教員は自身が担当している学年でなくても、生徒の顔や名前、性格を把握。生徒・教員みんなが顔見知りだ。さまざまな場面で、教員が生徒に「最近どう?」「どうしたの?」と声を掛けて雑談し、気になることがあれば、担任とも共有する。教員は「良き伴走者」(河村校長)でありたいとの思いを共有する。生徒を「指導」するよりも「サポート」することを大切にし、多くの目でそれぞれの生徒を見守る。
河村校長は「生徒が歩いていると、いろいろな先生が声を掛けて雑談が始まるのですが、その雑談がいつの間にか相談事になってしまっているのも日常です」と言って笑う。
生徒と教員の距離が近く、「第二の家」(河村校長)のような安心感の中で、生徒たちは自立し、それぞれの道にチャレンジしている。