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スマートフォンの理想と現実

サムスンら大手ベンダーが新端末の発表を見送り
新興勢力の中国勢には未だ“ビジョン”見えず

――モバイル・ワールド・コングレス(MWC)2013レポート【前編】

クロサカタツヤ [株式会社 企/株式会社TNC 代表]
【第45回】 2013年3月5日
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漁夫の利を得られなかった中国勢

 こうした中で、新たな製品を野心的に発表してきたのは、中国勢である。ファーウェイは新しいAndroidスマートフォンを、またZTEもFirefox OSを、それぞれ持ち込んだ。

 では、そんな中国勢が、今年のMWCで漁夫の利を得たのかといえば、さにあらず。

Ascend P2を発表するファーウェイ・デバイス会長兼コンシューマー向け事業最高経営責任者のリチャード・ユー氏 Photo by Tatsuya Kurosaka

 ファーウェイの端末の発表会は、MWC開幕前日の日曜日に行われた。しかしその発表内容は、関係者には誠に申し訳ないが、それこそ「つまらない」と一刀両断されてしまうものだった。

 端末そのもののスペックは、実に立派なものだ。iPhone5よりも高速で、バッテリーの保ちもよく、手袋をはめたままでも操作できる――おそらくスペック競争とその製品へのまとめ方という意味で、彼らに対抗できる端末メーカーは、もはや日本には存在しないだろう。

 デモ機を触ってみても、モノとしては良くできていると、強く感じられる。また出荷台数によるプレゼンスという意味でも、Android陣営のなかでは、もはやサムスン電子を脅かす最右翼の一員といえるだろう。中韓メーカーが微妙な立ち位置に置かれる日本市場ではさておき、世界市場では確実にプレゼンスを高めているのは間違いない。

 しかし、ではその立派なスマートフォンで何ができるのかと問われれば、これがまったく分からなかった。ファーウェイの端末を自分が買い求めたとして、これまでと違う何か新しい生活が訪れるようには、感じられなかったのである。

 理由はいろいろあるだろう。ファーウェイはこれまで、他社製品をベンチマークに、スペックのキャッチアップを重ねてきたが、いざそれらに比肩する性能を手に入れたとき、それでなにをするのかというアプリケーションやサービスのイメージを、彼ら自身が十分には構想できていないように思える。

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クロサカタツヤ
[株式会社 企(くわだて)代表取締役、慶應義塾大学特任准教授]

1975年生まれ。慶應義塾大学・大学院(政策・メディア研究科)修了後、三菱総合研究所にて情報通信分野のコンサルティングや国内外の政策調査等に従事。その後2007年に独立し、現在は株式会社企(くわだて)代表として、通信・メディア産業の経営戦略立案や資本政策のアドバイザー業務を行う。16年より慶應大学大学院政策・メディア研究科特任准教授。


スマートフォンの理想と現実

2011年はスマートフォンの普及が本格化する年になる…。業界関係者の誰しもがそう予感していた矢先に発生した東日本大震災は、社会におけるケータイの位置づけを大きく変えた。しかし、スマートフォンの生産に影響が及びつつも、通信事業者各社はその普及を引き続き目指し、消費者もまたそれに呼応している。震災を受けて日本社会自体が変わらなければならない時に、スマホを含むケータイはどんな役割を果たしうるのか。ユーザー意識、端末開発、インフラ動向、ビジネスモデル等、様々な観点からその可能性と課題に迫る。

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