TPPの議論では相変わらず農業は「弱い産業」というレッテルを貼られているが、全国を見回すと農業のビジネス化に成功した先駆者たちが数多く出現。成功のポイントは農業生産者の多様化、栽培手法の多様化、マーケットの多様化だ。今後はこの3つの多様化を後押しする政策の実行で、農業ビジネスのポテンシャルを存分に発揮できる場を作ることが重要である。

3つの多様化が農業をビジネスに

 本連載では日本農業再生のための5つの処方箋を説明してきた。日本農業は新たな時代に入りつつある。もちろん良い方向に、である。TPPの議論では相変わらず農業は「弱い産業」というステレオタイプに押し込められているが、日本全国を見回すと農業のビジネス化に成功した先駆者たちが数多く出現している。

 これからは先駆者たちが見いだした「儲かる農業」を、日本全体に広げていく段階だ。誤解の無いように追記するが、筆者が言う「儲かる農業」とは決して利益至上主義ではない。やはり農業生産者はまず職人的で、次に商人的な職業であるべきと考える。

 重要なのは、良いものを作り、ビジネスモデルを工夫すれば、きちんとした収益が得られるということだ。職人的な側面の強い農業においても、収益は不可欠だ。どんなに美味しい料理を作るシェフもパン屋も、収益なしでは事業は続けられないのと同じである。

連載第2回の農業法人化で触れた通り、農業がビジネスとして魅力的な産業になれば、やる気のある人材も資金も集まる。当然、農業生産者も誇りを持つことができる。古くから社会・経済のベースの一つである農業が元気になれば、単なるGDPの増加以上に日本全体を活性化する。

 最終回では、今までの議論のまとめの意味も含め、農業をビジネスととらえたうえで、成功のポイントである3つの「多様化」を検証していきたい。