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円安が止まるリスク要因〜脱デフレを邪魔する抵抗勢力〜 - 村上尚己「エコノミックレポート」

3月6日 18時0分
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ドル円相場は、先週イタリア総選挙を巡る思惑で91円台まで円高に振れたが、それも一時的で先週末(3月1日)に米国株の上昇などをうけて再び93円台に戻った。 2月26日レポートでも指摘したが、欧州発の円高は一時的で、今週になって93円前半のレンジで推移している(グラフ参照)。


今週の国内の重要イベントは、3月4、5日に行われた日銀総裁・副総裁に指名された方々の所信表明である。アベノミクスを成功させる金融緩和策が、日本銀行の新体制で実現するかを、判断する材料になるからである。このイベントに対して、ドル円相場がこの水準で安定しているのは、アベノミクス発動による脱デフレの期待が裏切られないと市場参加者が認識しているからだろう。

既にメディアで報じられているとおり、安倍首相がリーダーシップを発揮して任命しただけあって、脱デフレにつながる金融緩和策の実現を期待させる、黒田氏、岩田氏、中曽氏からの発言が目立った。ポイントは、(1)白川体制の日銀の金融緩和が不十分、(2)2%の物価目標実現は中央銀行の責任で実現するべき、(3)目標達成のために金融緩和強化を目指す、と3氏が認識していることである。

特に、黒田氏、岩田氏が、これらの点を国会の場で明言した意味は大きい。また白川体制を支えていた中曽氏は、これまで公の場で発言していなかったが、「(これまでの金融政策には)なお工夫の余地があった」「消費者物価の上昇率が引き続きゼロ%近傍で推移している。重く受け止める必要」「物価目標は大変重い約束。金融政策が果たすべき役割を責任を持って遂行したい。早期実現に向け全力を尽くす」と発言した。

中曽氏の発言は、2%の物価目標実現に向けて副総裁として協力する姿勢を示した点で、一定の評価はできる。そして、日本銀行プロパーの頂点である中曽氏の考えと行動は、今後の日本銀行全体に大きな影響を及ぼす。

ただ、2%の物価目標を実現する責任や強い意思が、中曽氏に十分備わっているかは疑問が残る。というのも、以下のように発言しているからである。「(物価目標は2年で達成できるかとの質問に対して)世界経済など様々な要因に左右される以上、必ず2年でとは言い難い」。もちろん、この発言に理解できる部分もあるが、「2年で目標実現しなくても、日本銀行の責任ではない」という意味である。

これまで脱デフレを目指すと言い続けながら、15年以上もデフレという経済状況を演出してきた日本銀行の言い分ということである。一方、これと全く異なる発言を行ったのが、同じ副総裁候補である岩田規久男氏である。

「(2%の物価安定目標の達成期限に対して)遅くとも2年で達成できる」「(達成できない場合の責任のとり方に対して)就任してからの2年だ。最高の責任のとり方は辞職だ」と発言した。つまり、岩田氏は、「2年の期限内に、目標を達成できなければ辞職する格好で責任をとる」ことを明言されたのである。つまり、同じ副総裁候補である、岩田氏、中曽氏の間では、目標が実現できるという確信度合い、その責任についての考え方に、かなりの違いがあるということである。

こうした中で、政治の世界では、とうてい理解できない動きがみられている。報道によれば、今回の日銀総裁・副総裁の人事について、参議院における野党の賛成が必要になるが、岩田副総裁の就任について民主党が反対すると報じられている。もちろん、民主党が反対しても、みんなの党などが岩田副総裁就任に賛成するため、岩田副総裁が誕生する見通しである。

ただ、責任と覚悟を持って脱デフレを真剣に考える経済学者である岩田氏を不適格であると、民主党が判断する理由は、筆者には到底理解できない。これまでのレポートでも紹介したが、支離滅裂な理屈を繰りだして、脱デフレを邪魔する抵抗勢力のしぶとさには驚きを禁じえない。円安トレンドはまだ続くだろうが、これが反転する要因がまだ残っていることを、我々はしっかり認識する必要がある。




(チーフ・エコノミスト 村上尚己)

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