男性社会の側面もあるけれど、ベトナムは日本より「女性に優しい国」
そう考えると、むしろ「年がら年中奉仕をしているのは、男性のほうではないか」と、愚痴の1つも言いたくもなってくるのである。
もちろん、ベトナムが「レディファーストの国」かというと、そうは言い切れない。一般的には女性のほうが大変だろう。基本的にこの国の女性はよく働く。共稼ぎも多い。なのに「共働きなのに、夫が家事を手伝ってくれない」といった記事を、新聞や雑誌で目にすることは少なくない。
特に農村部は「男性優位社会」の傾向が強い。妻の親戚が住んでいる田舎では、夕食のとき、テーブルを囲んで座るのは男性のみ。女性はその回りの壁際に座って食べる、というのが「習慣」だった。子供も女子より男子のほうが好まれ、出生率は男性のほうが不自然に高い。
ただ、少なくとも都市部の若い年齢層の間では、レディファーストの傾向が強い国だというのは間違いないだろう。特に日本に比べると、かなり女性に優しい国だというのが私の印象だ。
ともあれ、記念日が多いのはいいことだ。普段の生活の中で、改まってお礼の言葉は言うのは難しいが、こういう「口実」があれば、家庭や職場の女性たちに、感謝の気持ちを伝えるよい機会になる。そういう機会が多いことは、より良い人間関係を築く上でプラスに働くだろう。この日の贈り物をするために、1ヶ月の小遣いが全部飛んでしまうのは辛いが、それで女性たちが笑顔になってくれるのなら、安いものである。
最後に、「国際婦人の日」についての説明を少し追加しておきたい。
1904年の3月8日に、ニューヨークの女性労働者たちが、「パンと参政権」を求めてデモを行ない、女性参政権の運動を起こしたことが起源。この日を「国際婦人の日にしよう」と提唱したのは、1910年にコペンハーゲンで開催された「国際社会主義婦人会議」だそうだ。調べてみると、日本でも1923年の3月8日に、「国際婦人の日集会」が開かれたらしい。1975年には、国連においても「国際婦人の日」とすることが決議されているのは前述した通り。ただし、それほど広くは普及していないようで、私が調べた範囲だと、ベトナム以外では、ロシア、イタリア、中国、キューバ、モンゴル、ラオス、カンボジア、ペルーなどで、この日を祝う習慣があるようだ。キルギスやウズベキスタンでは、国民の祝日にも指定されているそうだ。


(文・撮影/中安昭人)
1964年大阪生まれ。日本での約15年の編集者生活を経てベトナムの大手日系旅行会社・エーペックスベトナムが発行する「ベトナムスケッチ」(現地の日本語フリーペーパー)の編集長として招かれ、2002年7月にベトナムへ移住。その後独立し、出版および広告業を行なう「オリザベトナム」を設立。現在は同社のオーナー社長。社員数は約40人で、「ベトナムスケッチ」(月刊)以外に、「アットサイゴン」(タブロイド紙・隔週刊)、「ヘリテイジジャパン」(ベトナム航空の機内誌・季刊)などを発行。2000年に結婚したベトナム人妻との間に7歳になる娘が1人おり、ベトナム移住以来、ホーチミン市の下町の路地裏にある妻の実家に居候中。
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