2011年3月11日、午後2時46分。三陸沖を震源とした地震が発生した。地震の規模を表すマグニチュードは国内観測史上最大のM9.0。

 この地震の影響で、東北から関東の太平洋岸には広範囲に津波が押し寄せた。とくに被害が大きかったのが岩手、宮城、福島の三県で、その後に続く福島第一原子力発電所の事故もあり、東日本大震災は日本に大きな爪あとを残すことになる。

 当時、厚生労働省(厚労省)は、震災でケガや病気をした被災者に対して、「保険証を持たずに受診しても健康保険を適用する」「窓口での自己負担なしで受診できる」「健康保険料の猶予・免除」などの特例措置をとり、お金の心配をせずに医療を受けられる体制をとった。

 あれから2年。被災者の医療費の特例措置はどうなったのだろうか。

発災当初は保険証やお金がなくても
誰でも差別なく医療を受けられる

 厚労省に災害対策本部が設置されたのは、地震発生の4分後の午後2時50分。DMAT(国の災害派遣医療チーム)の派遣などと並行して、医療機関や健康保険組合などの関係各所に「被災者は保険証をもっていなくても医療を受けられるようにしてほしい」「被災者の自己負担金や健康保険料に配慮してほしい」という要請を行った。

 平常時に医療を受ける場合、病院や診療所の窓口では健康保険証の提示を求められる。これは、患者が使った医療費の請求先を確認するためで、7割を健康保険に請求し、患者からは残りの3割を徴収する(負担割合は70歳未満の場合)。

 旅行先や突然の事故などで保険証を持たずに受診すると、医療費の請求先が確認できないので、医療機関の窓口では医療費の全額を患者が立て替えて、あとで健康保険から7割分を還付してもらう手続きをする。

 だが、東日本大震災では着のみ着のまま避難して、健康保険証やお財布を持ち出せなかった人も多い。そうした状況を考慮して、健康保険証を提示しなくても、医療機関で名前、生年月日、住所(会社員は勤務先も)などを伝えるだけで保険診療を受けられる特例措置が取られたのだ。