高価なデバイスなどは必要なく、専用アプリをインストールしたスマホを車に設置した状態で道路を走るだけ。収集された画像データをAIが解析し、損傷箇所などを検出する仕組みだ。

スマホやドラレコを積んで道路を走行するだけでデータを収集することが可能
スマホやドラレコを積んで道路を走行するだけでデータを収集することが可能

道路の状況はウェブ上のダッシュボードにて可視化される。UrbanX代表取締役の前田紘弥氏が「街中のデータが時間と場所でインデックスされるソフトウェア」と話すように損傷の種類や時期、対応状況などがデータとして蓄積されていくため、「台風の前後でこの道路にどのような変化があったのか」といったことを確認する用途で活用している自治体もあるという。

料金は細かい機能や利用方法などによっても変わってくるが、ミニマムでは年額100万円ほどからが目安になる。

ダッシュボードの画面イメージ。道路の状況がウェブ上で確認できる
ダッシュボードの画面イメージ。道路の状況がウェブ上で確認できる

UrbanXの事業は前田氏が東京大学工学系研究科に在籍していた際の研究内容を軸にしたものだ。研究を社会課題の解決につなげるべく、大学から知財やソフトウェアのライセンスを受けるかたちで2020年4月に会社を立ち上げた。

もともと自治体ともタッグを組みながら数年間かけて研究に取り組んできたため、すでに500万枚を超える道路損傷データセットを保有していることも強みだ。

東京都や神奈川県でも本格導入へ

前田氏によるとこの1〜2年ほどで自治体との連携も広がっており、実証実験段階のものもふくめるとすでに30以上の自治体と取り組みを進めてきた。

自治体が顧客となるため、企業向けのシステムなどと比べると正式導入までに時間を要することも多いが、4月からは東京都や神奈川県など関東の主要都道府県でも本格導入が始まった。

たとえばRoadManagerを活用している尼崎市では、もともと年間100件ほどの異常箇所を修復していた。RoadManager導入後は損傷の発見をソフトウェアに任せられるようになったことから、職員がより多くの時間を修復作業に使えるようになり、300件以上の箇所を修復できたという。

ソフトウェアで事前に損傷を検知できるようになれば大きな事故を未然に防ぐことにもつながるだけでなく、住民からの連絡を受けて緊急対応する件数を減らせる効果も生まれたそうだ。

また他の自治体では目視検査では回りきれない道路なども細かく点検できるようになった。そもそもRoadManagerを活用する場合は、職員が別の目的で外出する際に“ついでに”道路の情報を収集できる。「点検のための点検」が減ることで、より効率よくデータを集められるわけだ。

スマホやドラレコを使って道路のデータを集められる
データ収集の負担が少ないのがRoadManagerの特徴。他の用途で外出する際にもスマホを積んでおけばデータが集められる

2021年12月からは三井住友海上火災保険と共同で、同社の専用ドラレコにUrbanXの画像分析技術を搭載した「ドラレコ・ロードマネージャー」の提供も始めた。