東京・麻布十番にオープンさせたTAILORED CAFEなど、複数の店舗はすでに閉店している。そんなカンカクにとって転機となったのが、大手企業との提携による新規出店だ。

2021年9月にそごう・西武が展開するメディア型OMOストア「CHOOSEBASE SHIBUYA(チューズベース シブヤ)」内に新店舗をオープン。2022年1月にはUDSが下北沢駅隣接地に開業した複合施設「(tefu) lounge(テフラウンジ)」に空席状況を踏まえて事前にスペース予約ができるラウンジ形態の店舗をオープンした。

ラウンジスペース「(tefu) lounge by KITASANDO COFFEE」
ラウンジスペース「(tefu) lounge by KITASANDO COFFEE」

上記の2店舗に関しては、当初の見込みよりも売上が好調とのことで「(大手企業と提携して出店する)このモデルには一定の手応えを感じている」(松本氏)という。

その一方でネックとなっているのが店舗の立ち上げにかかる時間だ。新たにオープンする商業施設の中に新店舗を立ち上げる、というモデルではオープンまでに時間がかかってしまう。例えば、次に立ち上げる予定のラウンジ形態の店舗に関しては、商業施設自体が2024年オープン予定ということもあり、2年先の時間軸で話を進めているという。

「個人的にはすごく面白いプロジェクトではあるのですが、数年単位で物事を考えて進めていくのが果たしてスタートアップの時間軸なのか。また着実に売上を積んでいく今のモデルであれば、VCなどから資金を調達するエクイティファイナンスではなく、(イグジットを求められない)デットファイナンスの方が適しているのではないか、と感じる部分がありました。実際、多くの飲食店はデットファイナンスで資金を調達しています」(松本氏)

カンカクは2020年9月に、ジェネシア・ベンチャーズ、Coral Capital、Heart Driven Fundを引受先として、シリーズAラウンドで総額3.5億円の資金調達を実施している。「これが資金調達した際に、ステークホルダーに約束していた成長スピードだったのかと思う部分もあった」(松本氏)と言い、結果的にカフェ店舗事業は別会社で運営することを決める。

NTTドコモのアセットを活用し、より大きなビジネスに挑戦

“スタートアップ的なやり方”でのカフェ店舗事業の運営を断念した松本氏が、新たに注力することにしたのが、GOOD EAT CLUBのプロダクト開発と組織開発だ。前述の通り、カンカクは2021年1月から、同サービスのプロダクト企画・開発に参画しており、松本氏も運営元であるグッドイートカンパニーの取締役CPOを兼任してきた。