松本氏がグッドイートカンパニーへのM&Aを本格的に考え始めたのは、グッドイートカンパニーが食の複合施設「GOOD EAT VILLAGE」を東京・代々木上原にオープンしたタイミングだった。「グッドイートカンパニーの設立時に、資本提携も視野に入れていこうという話はしていた」(松本氏)としながらも、自身の考えについてこう語る。

「カンカクを設立した目的は、オンラインとオフラインを繋ぐビジネスを展開することです。あくまでカフェは手段のひとつ、という認識でした。そうした中、GOOD EAT CLUBというオンラインの取り組みだけでなく、GOOD EAT VILLAGEをオープンしたことでオフラインの取り組みもできるようになった。オンラインとオフラインを繋いだハイブリッドなビジネスを展開していく準備ができたので、グッドイートカンパニーと一緒に事業を進めていけば、自分がやりたかったことは実現できると思ったんです」(松本氏)

 

また、グッドイートカンパニーにはNTTドコモが出資している。オフラインの事業をやっていくには先行投資が必要であることを痛感していた松本氏は、「彼らのアセットを活用できれば、より大きなビジネスに挑戦できる」と感じ、参画を決断したという。

「世界一のレストランとして知られる、デンマークのレストラン『noma(ノーマ)』がコロナ禍の2020年5月にバーガーレストラン『POPL(ポプル)』をオープンしたんです。nomaのコースは数万円しますが、POPLでは数千円代でnomaが手がけるハンバーガーを食べることができる。このニュースを見たときに、『自分たちは便利なカフェだけをやっているようではダメだ』と思いました」

「食産業の可能性を拡げていくには、ITを活用した仕組み化の部分だけでなく、美味しいグルメなどのコンテンツサイドにいかなければいけない。コンテンツを持っているグッドイートカンパニーで自分たちが培ってきたテクノロジーをかけ合わせれば、より良いものが提供できると思いました」(松本氏)

松本氏はメルカリ在籍時に産直アプリ「ポケットマルシェ」を運営するポケットマルシェに投資を実行しているほか、個人ではオンラインマルシェ「食べチョク」を運営するビビッドガーデンに投資するなど、「昔から食の領域が好き」(松本氏)だという。

食べチョクとGOOD EAT CLUBの事業領域は被らないのか。松本氏によれば、食べチョクは生産者から直接商品を購入する仕組みとなっており、GOOD EAT CLUBは全国の飲食店などから出来上がった商品を購入する仕組みとのことで「被ることはない」とのこと。