週次の「OKRキックオフ」と「ウィンセッション」で、ケイデンスと個人・チーム目標が連動

ここで、ケイデンス経営を実践するログラスの事例を紹介する。ログラスではケイデンス経営を取り入れてから、3つの素晴らしい変化があった。

1つ目はリソースの適切な使い方を考えられるようになったことである。人や時間、資金などが限られた中で戦うSaaSスタートアップは、一刻も早く成長するために効率的なリソース配分が欠かせない。ケイデンス経営の導入によって3カ月後に開催が確定しているイベントを成功させるため、リソースの割り当てを各チームで正確に行えるようになった。

2つ目はメンバーのモチベーションを維持できるようになったこと。3カ月ごとに開催されるイベントが区切りとなり、ひとつのサイクルができた。

ログラスでは毎週月曜に「OKRキックオフ」、毎週金曜に「ウィンセッション」と呼ぶ定例のミーティングを行っている。「OKR」はObjectives and Key Results(目標と主要な成果)の略で、目標管理の手法。OKRキックオフではその週に行うことをチームのメンバーがそれぞれ宣言し、ウィンセッションではその週にやったことや成果(Win)を発表する。

ケイデンス経営の本質は、長期的かつ抽象度の高い経営の大きな目標を、四半期ごとの各チームのリズムに落とし込むことにある。週次の「OKRキックオフ」と「ウィンセッション」の2つの機会を組み合わせることで、他チームがどのような動きをしているのかを把握し、お互いのリソース配分を融通し合うような動きをすることも考えられる。リソースが少ないスタートアップだからこそ、会社全体の歯車と個人・チームの歯車を噛み合わせることが重要となる。これによって、全社として掲げた四半期の目標に向かって、今週自分は何を達成すべきか、チームは何を達成すべきかが明らかになる。結果、事業はもちろん、採用活動も順調に進んでいる。

3つ目は(経営サイドにとって)経営がしやすくなったことだ。ケイデンス経営の仕組みを取り入れることで、チームが自然と高回転するようになり、COOがいなくても組織が自律的に成長していく状態ができている。

ケイデンス経営の効果を最大化できるのは「PMFの達成後」

ログラスではケイデンス経営の効果が出ているが、これは創業間もないスタートアップにも勧められるかというと少し違う。自社の開発工数を正確に見積もることができ、四半期ごとに新機能をリリースできるくらいの安定的な開発体制が整った時点で始めるのがおすすめだ。

開発体制を構築する前にケイデンス経営を始めると、新機能がローンチされないまま、3カ月経ってしまった……といった事態を招きかねないからだ。スクラム開発を問題なく回せるようになったタイミングで、ケイデンス経営を取り入れるのがいいだろう。