今の日本には二羽のハゲタカが巣食っています。しかも本音のスケベ心、つまり鋭い爪を一生懸命隠しながら生息しているのですから、一層タチが悪いと言わざるを得ません。その二羽のハゲタカとは、サーベラスと消費者庁です。

サーベラスの「ソフト路線」は本物か?

 サーベラスは、このコーナーでも書いたように(第220回参照)西武ホールディングス(以下、HD)に対して、不採算路線や西武球団の売却を求めたのみならず、アベノミクスで不動産価格が上昇しつつある中で西武が持つ不動産に目をつけたのか、自らが選んだ3人を取締役に加えるよう求め、更にはTOBまで仕掛けてきました。

 こうした一連の行動は、ある意味非常にハゲタカらしいのですが、それに対するメディアなどの批判が高まると、今度は一転してソフト路線のメディア戦略を始めたように見受けられます。不採算路線や西武球団の売却は“経営改革のアイディアの1つとして示した”だけで“まったくこだわりはない”、“できるだけ早期に再上場させたい”などと発言し出したことからも、それは明らかではないでしょうか。

 しかし、個人的にはこうした発言を鵜呑みにしてはいけないと思います。単純に考えても、西武HD株の再上場を望んでいるなら、なぜサーベラスが選んだ3人を取締役に送る必要があるのでしょうか。ガバナンス強化が目的と言っていますが、西武HDは既に“ガバナンス推進有識者会議”を設置しています。実績ある財界人を中心としたそのメンバーの方が、行政経験しかない五味廣文氏(元金融庁長官)よりも民間企業のガバナンスという観点では適切です。

 更に言えば、サーベラスが投資している他の企業の状況をみると、サーベラスが取締役を送り込んでも、西武のようなインフラ企業、公益性の高い企業の企業価値を高めるどころか、むしろ低下させてしまうのではと懸念せざるを得ません。

 その例を紹介しましょう。【別紙】は、国交省の陸運局が公開している東北地方のバス会社の経営状況ですが、この中にはサーベラス傘下の国際興業が保有する2つのバス会社(岩手県交通と十和田観光電鉄)が含まれています。そして、これら2社のいずれについても、事業規模を考えると車両減価償却費は他社と比べて非常に少ない水準となっており、設備投資がほとんど行われていないことを意味します。