白物家電の領域では世界の王者となった中国最大の家電メーカー・ハイアールの本社には、会社の歩みを紹介する展示ホールがある。ハイアールの前身は、山東省青島市の国有企業、青島冷蔵庫総廠で、当時の従業員は400名ほどだった。

 経営効率の悪い中国国有企業の例に漏れず、経営不振に陥った同社は1984年には1年間で3回も工場長を代えるなどして再起を図ったものの、いずれも失敗に終わり、負債額は約147万元に膨らみ、給料も支給できないほどの窮地に追い込まれていた。そこでその年4人目に送り込まれた工場長が、今のCEOである張瑞敏氏だった。

 しかし、張氏の目に映った工場の姿は、目を覆いたくなるほど惨めなものだった。工場は労働規律がないも同然の無法地帯と化していた。そのため張氏は、労働規律に関する13の「べからず」を設けた。その中の一つは、なんと工場内で大小便をするべからずという信じられない内容だった。

今や深夜のオフィスビルの明かりは
日本の生産性の低さの象徴

 1990年半ば頃まで、日本を訪れた多くの中国人が、夜になっても煌々と照明がついているオフィスビルを仰ぎ見て、感嘆する。「勤勉な日本人には、私たちはとても追いつけそうにない」と。日本に視察に来た中国の政府関係者や企業関係者もそうだったが、日本社会に根を下ろしはじめた中国人留学生も同じく感嘆・感心していた。

 だが、今やその夜のオフィスの照明を褒める中国人はいない。むしろ、その深夜になっても消さないオフィスの照明を、日本企業の生産効率の悪さの象徴として見ている。

 数年前に、東京・汐留の高層ビルにあるホテルのバーで、会社を経営する新華僑の友人と久しぶり飲んだことがある。彼は「莫さんと同じように、おれも一番、尊敬しているのは、戦後の廃墟から日本を世界2位の経済大国にまで復興した世代の日本人だ」と主張する。