わが国の大学の競争力は、明日のわが国のビジネスの競争力を示唆するものである。当コラムでも、何度か大学の競争力を高めるいくつかの方策について、私見を述べて来た。

●秋入学への変更
●単位さえきちんと取得すれば、2年~4年でいつでも卒業
●就活は卒業後に行う
●学生ローンの導入
●学生の評点による教師の評価

 等々である。今回は、「学生流動化」の問題を取り上げてみたい。

エラスムス計画に学ぶ

 EUにはエラスムス計画というものがある。欧州委員会や文部科学省の資料によると、エラスムス計画は、EUの人材養成計画、人材交流計画の一環を成すもので、大学間交流協定等による共同教育プログラムを積み重ねることによって、ヨーロッパ大学間ネットワークを構築し、EU加盟国間の学生流動化を高めようという壮大な計画であって、1987年6月に正式決定された。一般には、エラスムス計画は、次の4期に大別されている。

■第1期(1987年~1995年)
 年間約3000人の学生交流(12ヵ国の300大学程度が参加)、約1000人の教師交流からスタート。

■第2期(1996年~2000年)
 ソクラテス計画に含まれる。学生交流をはじめとする9つの事業から成る。

■第3期(2001年~2006年)
 ソクラテスII計画に含まれる。ソクラテスII計画の期間内の予算は約18億5000万ユーロ(この内約50%がエラスムス計画)。学生交流を中心に8つの事業から成る。

■第4期(2007年~2013年)
 EUの生涯学習行動計画に含まれる。生涯学習行動計画の期間内の予算は約70億ユーロ(この内約40%がエラスムス計画。エラスムス計画予算の内80%以上は流動性の向上)。2012年までに1987年から数えて累計300万人の交流達成という数値目標が掲げられた他、学位の透明性、適合性の向上などが盛り込まれている。