3月末にかけて、セミナーに出席するためにソウルを訪れた。韓国は常に北朝鮮と臨戦態勢にある国とのイメージが強いことに加えて、金正恩・第一書記の挑発行為が始まっていたため、「ソウルはいかにもピリピリしたムードに包まれているだろう」と先入観を持っていた。

 ソウルに着いてみて、そうした先入観は拍子抜けとなった。街ですれ違う人々の表情を見る限り、少なくとも表面的には緊迫した雰囲気は感じなかった。セミナーに参加した韓国の企業経営者に尋ねてみても、「もちろん警戒はしているが、北朝鮮の挑発行為は今に始まったことではない」と冷静な答えが返ってきた。

 また、ソウル在住の日本人駐在員から、「日本のメディアが緊迫した雰囲気を撮りに来たのだが、そうした場面が見つからず帰った」という、冗談とも取れる話を聞いた。むしろ、韓国の人々の心配は、ウォン高による輸出の減速やそれに伴う景気の低迷に向いていた。

 日本に帰って、何人かの韓国人留学生にヒアリングしてみた。彼らも、「偶発的に北朝鮮と軍事的な衝突が発生する懸念はあるが、韓国の経済状況のほうが心配」と話していた。北朝鮮の挑発行為よりも、経済状況や卒業後の就職のことが心配な様子だった。

 もちろん、わずかな滞在時間における限られた人へのヒアリングだけで多くのことがわかるわけではないが、少なくとも現在のソウルの状況は、日本にいるときに想像していたものとは違っていた。

北による襲撃未遂事件の舞台となった
青瓦台の裏山はハイキングコースに

 ソウル市内の大統領官邸である青瓦台は、とても警備が厳重だと聞かされていた。1968年に北朝鮮のゲリラが青瓦台の裏山に侵入して、警備兵と銃撃戦が発生(=青瓦台襲撃未遂事件)して以降、一時期、市販される地図からも記載を消すほど警備に気を使っていると聞いたこともある。