これまで見てきたように、中国の場合、GDP(国内総生産)など政府によって作成・公表されるマクロ統計は、あまり詳しくない。また、住宅価格などは、伸び率しか分からず、水準が公表されない。不都合なデータが意図的に隠蔽されているのではないかとの疑いも生じる。また、使い勝手もよくない。

 これに対して、上場企業の場合には、財務データを中心として、世界的な基準にしたがってのデータが公開されている。同一ベースでデータの国際比較ができることの意味は大きい。

 だから、情報のありかと調べ方を知っていれば、かなりのことが分かる。ただし、日本の法人企業統計に相当するような統計がないので、全体像は分からない。分かるのは、あくまでも個別企業だ。

 ただし、それを日本企業と比較することによって、日本企業の問題点が分かる。中国の企業を調べることだけでなく、中国との比較において日本を見ることも重要だ。

 以下では、中国の家電メーカーのハイアールと、日本のパナソニックを比較してみよう。

急速に成長したハイアール

 ハイアール・グループ(海爾集団)は、家庭電化製品のメーカーだ。青島市から青島冷蔵庫本工場という集団所有制企業に派遣された張瑞敏が、1984年に設立した企業だ。87年に「ハイアール」と改称した(詳しい説明は、同社のホームページのhttp://www.haier.net/cn/about_haier/history/にある)。

 赴任直後の張が、同社が生産した不良品を全従業員が見守る中で打ち壊し、「品質こそ命」という考えを従業員全員に叩き込んだというエピソードは有名だ。これによって、「中国製品は安いが粗悪品」というイメージを払しょくしたと言われる。さらに、彼は「農民出身者で一般労働者として採用された者でも、業績次第では管理者になれる」という方針を確立した。