中国の国家統計局・国家発展改革委員会・国家エネルギー局は、7月1日、各省の2008年の「単位GDP当たりのエネルギー消費」「単位工業付加価値当たりのエネルギー消費」「単位GDP当たりの電力消費」などのデータを発表した(なお、こちらも参照)。

 これによると、2007年に比べて、中国全体での単位GDP当たりのエネルギー消費は、4.59%低下し、単位工業付加価値当たりのエネルギー消費は8.43%低下し、単位GDP当たりの電力消費は3.30%低下した。

 これは、中国のエネルギー消費が、わずか1年という短期間のうちに、劇的に効率化したことを示すものだ。しかし、こうした驚異的な変化が本当に生じたとは、にわかには信じがたい。

  前記のデータによると、単位工業付加価値当たりのエネルギー消費の減少率が大きい地域では、減少率が14%を超えている。また、単位GDP当たりの電力消費が大きく減少した地域では、減少率が10%を超えている。このような劇的な変化が1年間という短期間で起こることは、普通はありえないものである。

  後に述べるように、中国当局は、「産業構造に大きな変化があったためにこうした現象が生じた」と説明している。とりわけ、サービス産業への移行やハイテク産業の発展だ。ところが、減少率が大きい地域は、たとえば内モンゴルだ(単位工業付加価値当たりのエネルギー消費は14.12%減少、単位GDP当たりの電力消費は10.20%減少)。ここは、中国の中でいわば辺境部にあたる地域だが、こうした変化を引き起こすほど大きな産業構造の変化がこの地域でわずか1年の間に生じたとは、信じがたいことである。

  中国の2008年の実質GDP成長率は、9%である。しかし、仮にGDPの数字ではなくエネルギー消費の数字のほうが正しいとすると、実質GDP成長率は4.4%程度ということになる。これは日本の4%と大差がなく、アメリカの5.8%よりは低い。

 「中国当局が発表する統計をそのまま信じてよいのか? 中国で本当は何が起こっているのか?」というのは、立ち入った議論をすべき問題なのである。