従来の教育に危機感を持つ
「親たち」が変化

 近年、大学入試改革の影響、コロナ禍でのオンライン授業の普及、都内での中学受験ブームなど、様々な要因が重なり合って、教育のあり方や教育に対する価値観が大きく変わってきました。特に注目すべきは、「親たち」の変化です。従来の教育とは異なるものを求める傾向が強まっています。

 働き方改革、転職、副業の一般化など親世代の働き方が変化し、また、日本社会全体の弱さや外資系企業の強さが顕在化したこともあり、親たちは「自分たちが受けてきたような従来の教育ではこれからの時代を生き抜けない」という危機感を抱いています。

「高い偏差値の私立一貫校に進み、高い偏差値の大学に入り、安定した企業に就職する」のが成功の絶対法則とは言えず、変化に対応できる教育の必要性を切実に感じ始め、偏差値、ブランド、名門といったレッテルに惑わされずに学校を見るようになったのです。

 実際、社会の変化よりも教育現場における変化のスピードのほうが速くなっています。

 たとえば、教育現場では、SDGsやLGBTやジェンダー教育が当たり前になりました。十文字中学・高等学校のように女子の制服にスラックスが取り入れられたり、市川中学校・高等学校(以下、市川)では男子の半ズボン制服が導入されるなど、大胆な制服改革をする学校もあります。

 2023年の夏の甲子園では、生徒の自主性を重んじ、監督と生徒の関係がフラットであるなど、新しい時代のリーダーシップを体現した監督が慶應義塾高等学校を全国優勝に導きました。

 こういう変化を目にして、親は、学力プラスアルファの要素を重視するようになり、子どもにとってよりポジティブな「環境選び」をするようになっています。

 偏差値やどこの大学に何人受かったかという出口の数字だけでなく、立地や施設、個性を伸ばせるかどうか、異性とのコミュニケーション能力を育成できるのか、LGBT、ハラスメント、SDGsなどにもしっかり対応できているのかなど、多角的な視点で総合的に学校を選択しています。SNSで情報が拡散されやすくなったことも学校選びの基準の多様化に拍車をかけています。

 こうした風潮の中で、「リベラル」な親が、子どもに「新しい教育」を受けさせられる最適な環境として、渋幕・渋渋を選んでいるのです。と言っても、学校側がやっていることは創立時からあまり変わってはいません。総合力での学校選びが行われることで、渋幕・渋渋の良さに気づく人が増えたという面もあるでしょう。