職場へは「電車通勤が当たり前」というのは、もう古い考え方かもしれません。実は近年、若手社員を中心に自転車で悠々と出社する「チャリ通族」が増えているからです。

 一方で「自転車で通うなんて危険」「朝から運動なんて疲れる」というようなネガティブな意見を持つのは、ローンで郊外にマイホームを購入し、電車で長距離通勤をしている人たちです。

 こうして通勤の在り方が変わりつつあるなか、これからの通勤事情はどうなるのか?急増する若手社員の自転車通勤を題材に考えてみましょう。

11時には終電がやってくる!?
「片道2時間通勤なんて信じられない」

 新入社員の歓迎会や新しい組織での飲み会などが開かれ、春の繁華街は活気に満ちています。そんな雰囲気につられて、つい普段より店に長居してしまいがち。ただ、明日の仕事もあるため、帰宅時間を考えて飲まなくてはなりません。そこで、誰もが気になるのが最終電車。おのずと通勤時間の長い人から先に帰ることになります。

 そんな通勤時間をきっかけに価値観の違いを痛感する出来事に遭遇したのは、精密機械メーカーに勤務する20代の若手社員とその先輩社員たち。

「そろそろ帰らないと…。終電だから失礼するよ」

 同僚との飲みが佳境に入るタイミングで席を立ったのは、Dさん(35歳)。時計を見て、大急ぎでカバンを持って帰ろうとしています。

 時刻はまだ11時前。最寄り駅の電車は、12時過ぎまで動いています。居酒屋はまだ満席状態。そこで、「もう少し飲みましょうよ」と後輩が帰りを急ぐDさんを引き留めようとしました。

 しかし、それに対して、

「駅から自宅までの最終バスに間に合わなくなるから、帰りなさい。お疲れ様」

 と制したのは、上司のFさん(45歳)。Dさんが職場から2時間近くかかる場所にマイホームを買ったことを知っていたので、帰ることを勧めたのです。

「この時間に出ないと間に合わないところから通うなんて、ありえない」

 一方で若手社員は、そう勝手に盛り上がり始めました。なかには「1日のうち4時間もの時間を通勤に捧げる人生なんて」…と同情する声まであがる始末。