まったく失敗しない経営者は
どこかで成長が止まる可能性も

 では、まったく失敗しない経営者は、優れた経営者と評価できるのでしょうか。

「失敗は成功のもと」ということわざがあるように、失敗から学ぶことはたくさんあります。まったく失敗しない経営者は、どこかで成長が止まる恐れがあります。

 松下幸之助さんは、著書『道をひらく』の中で、「三べん事を画して、三べんとも成功したら、これはちょっと危険である」と書いています。そして、「どんなにえらい人でも、三度に一度は失敗したほうが身のためになりそうである」とも。

 成功を続けているリーダーは、周囲にちやほやされて有頂天になったり、自分は偉大な経営者だと天狗になったりするかもしれません。そうなると周囲の言葉が耳に入らなくなり、次にトラウマどころか会社の存続に関わる大失敗をするかもしれません。

 ですから、まだ事が小さいうちに失敗を経験して、反省する習慣を身につけたほうがいいとも言えます。ニデックの永守重信さんは、部下が小さなミスを犯すと徹底して叱るそうです。

 小さなミスをなあなあにして見逃してしまうと、反省をする機会を失うから次に大きなミスをするかもしれない。そのミスの責任を取って大切な部下がやめざるを得なくなるかもしれない。だから、小さいミスのうちに徹底して叱って気づかせて反省させて、大切な部下を育てるというわけです。リーダーには叱る勇気も必要です。

 本当にその通りだと思います。ですが、経営者になると叱ってくれる人がいなくなります。だからこそ経営者は生き方の勉強をして正しい姿勢を身につけて、自分を律しなければならないのです。

(小宮コンサルタンツ代表 小宮一慶)