中国人選手同士の試合なのに、片方の選手にブーイングが……

 その一方で、議論を巻き起こしたのは「競技場の外」、中国人観客の態度だった。

 あからさまだったのが、女子卓球シングルスの決勝戦だ。対戦したのは、倪選手を破って勝ち進んだ孫選手と、ベテランの陳夢選手という最強の中国人選手2人。一部で「まるで国内選手権みたい」と言われながら臨んだ試合はその後、驚きの展開を見せた。

 なんと、ゲームの最中に中国人観客たちが陳選手の一挙一動に激しいブーイングを浴びせ続けたのだ。そのあまりの激しさに、観客席の外国人観客からはあえて陳選手にエールを送る声も上がった。また、観客席で「陳選手も孫選手も中国の選手。どっちも頑張って!」と声を上げた中国人観客が、孫選手を応援する観客に激しく詰め寄られたというエピソードもSNSで投稿された。

 最終的に、試合は陳選手が東京五輪に次いで孫選手を下し、金メダルに輝いた。だが、その表彰式でも陳選手の名前が呼ばれると、観客席からそれをかき消すように孫選手の名前の連呼が起きた。それについて、メディアにその理由を問われた観客のひとりは、「自分のお気に入り選手の名前を呼んじゃだめなの?」とうそぶいたという。

 五輪が「愛国精神」の発揚の場になりやすいのは前述したとおりだが、自国選手同士の試合でどちらか一方がブーイングやヤジの的になるケースは記憶にない。特に国技である卓球で繰り広げられた「自国選手いじめ」はあまりにも醜く、「一体どうした?」という声が内外から上がった。