「化粧品の低価格化が想定より速く進行している」と前田新造・資生堂社長はこぼす。

 大手化粧品メーカーの業績が総崩れになっている。資生堂の2009年度上半期の売上高は前年同期比12%減の3173億円、営業利益は同33%減の227億円となり、上半期としては六期ぶりの減収減益となった。花王、コーセーも同じく減収減益で、両社共に09年度通期業績見通しの下方修正に追い込まれた。

 大手各社の主力商品は2000~5000円の中価格帯、次いで高付加価値で利幅の大きい5000円超の高価格帯に集中している。主要な販売チャネルは百貨店・専門店だ。

 ところが、長引く不況で消費者の節約志向が強まり、売れ筋が2000円未満の低価格帯へとシフト。それに伴い、化粧品の販売チャネルは、百貨店・専門店に代わって、ドラッグストア・コンビニエンスストアが勢力を伸ばしつつある。

 大手の不振を尻目に、たとえばロート製薬は化粧品業界の構造変化に乗って業績を伸ばしている。医薬品の技術をベースにした機能性化粧品を、ドラッグストアや通販で1000円前後という低価格で販売。同社のスキンケア関連事業の上半期売上高は前年同期比3.3%増、300億円を突破した。

 しかし、主戦場が低価格帯へと移っているにもかかわらず、大手各社の動きは鈍い。単価が低く利幅も薄い低価格帯に注力すれば、かえって収益が悪化するリスクがあるからだ。

 「消費者のマインドが冷え込んでおり、来年以降も上向く気配が見えない」と尾崎元規・花王社長。このまま我慢を決め込むか、思い切って低価格路線に打って出るか。大手各社は難しい選択を突きつけられている。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 前田 剛)

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