「裁判官の独立」は、形を変えて今も脅かされている
2022年2月26日、井垣康弘さんは急性虚血性心疾患で亡くなった。82歳。その晩年は、法律家として幸せなものではなかった。定年後、井垣さんは弁護士をしていたが、2015年、『文藝春秋』に神戸連続児童殺傷事件の神戸家裁の審判書を全文公開したため大阪弁護士会から業務停止3カ月の懲戒処分を受け、発言力が失われてしまったのである。だがこの件、井垣さんに責任がないとは言えないが、主導した人間が別にいる。その人物の責任は重い。そこで、関連する2018年の記事のリンクを示したい(https://facta.co.jp/article/201811042.html)。
無署名記事だが、執筆したのは筆者だ。この記事では、今年3月、SNSの書き込みで裁判官を罷免された岡口基一氏についても触れている。「裁判官の独立」は、形を変えて今も脅かされているのだ。
■「虎に翼」とブルー・パージを理解するために
・山本祐司『最高裁物語』(上下、講談社α文庫):最高裁とブルー・パージの全体像を知る最適な本
・安原浩「わが国における司法権独立の実態を考える??その歴史的評価と現状」『年報政治学』69巻1号(2018年):このURLからダウンロード可能。裁判官の立場からブルー・パージを「司法と政治の緊張」と捉えて歴史的視座とブルー・パージの実態、後世への影響をコンパクトにまとめている。安原氏は7月に死去。
■井垣氏の仕事を理解するために
・井垣康弘『少年裁判官ノオト』(日本評論社):絶版になっているのが残念。少年Aの事件をはじめとする少年事件や、同席調停にいかに向き合ったかが書かれている。実は編集を担当したのは筆者だ。