出社至上主義に回帰した日本企業が
考えるべきこと

TIME SMART お金と時間の科学アシュリー・ウィランズ氏の著書『TIME SMART お金と時間の科学』(東洋経済新報社)

 また、「働き方・時間の使い方と幸福の関係」を研究している私の目からは、「出社至上主義」も日本企業が抱える課題の一つのように見えました。

 研修中、多くの大企業の社員が「パンデミックの間に推奨されたハイブリッドワークは、日本企業には根付かなかった」「会社がリモートワークを認めていても、結局、皆、出社している」と口々に言っていたのが印象的でした。その理由は、「日本企業の職場には『出社しなければならない』という“暗黙のプレッシャー”があるから」とのことでした。

 日本企業がグローバル化を推進していくためには、世界から優秀な人材を獲得しなくてはなりません。こうした中、出社至上主義を維持することが正しいのか、「朝から晩までとにかく会社にいてください」と要求することが本当に人材の獲得につながるのか、社内で真剣に議論する必要があるように思います。

 会社が社員に出社を強制することが時として社員の生産性にマイナスの影響を与えることは、すでにいくつかの研究結果から明らかになっています。社員自身が「今日もまた会社で無駄な時間を過ごしてしまった」と感じているような場合は特にそうです。

 優秀な社員であるほど、出社がどれだけ成果に結びついているのかを意識します。こうした社員にとって「会社にいることが仕事」になっているような状況は、かえってストレスになってしまいます。社員に出社を強制すれば、ストレスによる病気や、「燃え尽き症候群」を招いてしまうこともあるのです。