世界経済の最後の砦だった中国や新興国が、ついに崩れた。かつて米財務次官補としてアジア通貨危機の事態収拾にあたったエドウィン・トゥルーマン氏(現在ピーターソン国際経済研究所シニアフェロー)は、中国の2009年実質成長率は6%に届けばいいほうであり、世界経済の成長率は1980年代初頭以来の1%前後にまで失速すると見る。世界は同時不況に突入したと断言する(聞き手/ダイヤモンド・オンライン副編集長 麻生祐司)

エドウィン・トゥルーマン
エドウィン・トゥルーマン 元米財務次官補/ピーターソン国際経済研究所シニアフェロー

―アイスランド、パキスタン、ウクライナ、ハンガリーなど国際通貨基金(IMF)に駆け込む新興国が続出し、世界経済情勢はさながらアジア通貨危機を彷彿させる様相を呈してきた。事態をどう受け止めているか。

 世界経済の好不況の分水嶺は成長率3%と言われるが、私の見立てでは、2009年は1%にまで落ちる(IMFの見通しは2.2%)。

 1%といえば、第二次石油危機後に世界経済が大幅に減速した1981年と1982年以来の低水準だ。その意味で、事態はアジア通貨危機時よりも深刻と見ている。先進国、新興国の別なく実態経済に深刻な影響が出始めていることを考えると、金融危機という表現でも、もはや言い足りない。文字どおり世界不況と呼んでいいありさまだと思う。

―中国など巨大新興国の成長が世界経済の急減速を防ぐ可能性はまったく残されていないと見ているのか。

 そんな甘い期待は捨てたほうがいい。統計データに正確性を欠く国の経済成長率を予測することは、はっきり言って、避けたいが、それでもあえて予測すれば、中国の2009年の成長率は7%どころか、6%に届くかどうかがいいところだろう。長年にわたり二桁台で伸びてきた経済成長率が6%に落ちるということは、日本で言えば、一般の期待感として、2~3%のプラス成長からマイナス2%成長に落ちるのと同様だ。

 そもそも中国は、GDPに占める輸出・輸入の割合がそれぞれ3割前後と高く、日本以上にオープンな経済であると言える。世界経済の減速によって、ひときわ大きな打撃を受けるのは自明の理だ。