消費税率の8%への引き上げを1年後に控え、政府は、消費税の円滑で適正な転嫁を確保するため、大規模小売事業者などが、仕入れに当たって買いたたきなど、消費税の転嫁拒否の行為を行うことを法律で禁止する。

 加えて、価格表示についても、「消費税は転嫁しません」、「消費税は当店が負担しています」、「消費税率上昇分値引きします」、「消費税相当分,次回の購入に利用できるポイントを付与します」等の表示を禁止する。

価格表示の一律規制は当然か

 優越的地位にあるものが、納入業者に対して、買いたたきや転嫁拒否をする行為を禁じることは当然だろう。しかし、価格表示に関する規制については、一律禁止する前に、冷静に消費税と価格との関係を考えてみる必要がある。

 筆者は、本連載第8回 「『総額表示』と『外税方式』消費税引き上げにとってどちらが望ましい価格表示か」で、消費税と価格の関係について、以下のように論じた。

「自由経済の下では、価格は需要と供給によってきまる。決して、コストによって決まるわけではない。たとえば、為替レートや国際市況の変化によって、日々原油価格や小麦等の1次産品価格などが変化しているが、それに応じて製品価格の値段をその都度変えているわけではない。小麦の値段とパンの価格との関係を見れば、消費者への価格転嫁が容易でないことが分かる。

 価格を形成するコストである人件費・原材料費や燃料などが日々価格変動していく中で、モノの価格が市場メカニズムで決まっていくと考えるなら、消費税率の引き上げだけが、特別なコストとして扱われる、つまりその分だけは絶対に引き上げなければならない、と考えることには、やや無理がある」。