本誌2013年4月号の特集「持続可能性」では、批判にさらされていたウォルマートがサステナビリティ活動に目覚め、エコ推進の旗手となるまでの経緯を報告している。ゴールマンは同社の取り組みを、「負の価値を明らかにして競争優位を確立する」ものと捉えている。この発想は近い将来、否応なくすべての製造業・小売り業に求められることになるかもしれない。


 2009年にウォルマートが発表した「サステナビリティ・インデックス」は、市場における「エコの透明性」の時代が到来したことを告げるものだ。これは単なる憶測ではない。ウォルマートは、透明性の要件に従わないサプライヤーは「取引相手として望ましくない」と示唆している。つまりサプライヤーは今後、売り場獲得の基準として製品の環境負荷に関する透明性を問われるようになるかもしれないのだ。

 同社が世界各地で取引を行う10万を超えるサプライヤーは、今後は自社製品の環境負荷を計算し、開示しなければならない。それらの情報は審査を経て格付けされ、消費者に見えるかたちで値札と一緒に表示される。これにより、消費者が商品の環境負荷を自力で調査するという「努力コスト」がゼロになる。これまで消費者には、迷路のように複雑なネット上の評価システムをさまよいながら検索し、得た情報を店の売り場でいちいち思い出すという作業が強いられていた。

 数年にわたる消費者調査の結果によれば、買い物の際に自身の理念・価値観を重視する消費者はわずか10%程度で、まったく気にしない人が約25%である。残る3分の2の消費者に対して、今回のウォルマートの取り組みは意味を持つ。彼らは余分な努力を必要とせず価格に差がなければ、環境に配慮した商品を購入すると答えている。低価格についてはウォルマートの得意分野だ。

 サステナビリティ・インデックスは、企業や商品が及ぼすインパクトに関する詳細な質問への回答に基づいて決定される。その項目はCO2排出状況から、固形廃棄物の削減目標、従業員の賃金と人権、地域住民への貢献まで多岐にわたり、第三者機関による認証が義務づけられる。小売り業の巨人ウォルマートは自社のサプライヤーにサステナビリティ商品を求める一方で、ターゲットやコストコなどの大手ライバル企業にも取り組みへの参加を呼びかけている。これが実現すれば、サプライヤーと消費者の両方にとって便利になるだろう。そして参加する大手小売り企業がさらに増えれば、消費者向け商品に関する永続的改善の必要性はますます高まっていくはずだ。