2008年のリーマン・ショックを機に中小企業金融円滑化法が施行され、借入金のリスケジュースが当たり前となり倒産は減少し続けた。一方、その間に長年業務に従事し、数多くの取引先の倒産を見てきた「職人」「生き字引」と呼ばれるような審査担当者が数多くリタイアしていった。また、部署の縮小や人員の削減も各所で進んだ。
しかし、アフターコロナで倒産は想定外の勢いで増加し続けている。「まずい…」と思って社内を見渡してみると、取引先管理をする部署であるにもかかわらず、取引先の倒産を経験したことのある社員、危ない会社を見分けるノウハウを持った社員が誰もいないのだ。
ではどうするべきか。まずは倒産の基礎知識、取引先訪問時のチェックなどのポイントを広く、浅くでもいいのでなるべく多くの社員に知ってもらうことが大切だ。特に取引先に接触する営業担当者の意識が少し変わるだけで、通年の会社全体の焦げ付き額は大きく変わってくると考える。
24年下半期の倒産で
話題となった企業8社
次に筆者が選ぶ2024年下半期の話題になった倒産(関東エリア)を8社紹介したい。昨年は堀正工業(東京、破産)が「世紀の大粉飾」の発覚の末に倒産して大きな話題になったが、今年も粉飾や不正発覚後に倒産するケースが相次いだ。特に環境経営総合研究所の倒産経緯や公表業績と実態との乖離には呆れるしかなかった。
【7月】
●MSJ資産管理(旧・三菱航空機、東京)
三菱重工業の子会社として国産リージョナルジェット機「スペースジェット(旧・MRJ)」の開発を進めていたが、初飛行や納入計画が繰り返し延期されて見通しが立たない状況のなか、新型コロナで航空旅客需要が消失し23年2月に開発中止を発表していた。負債は約6413億円で2024年最大となる見通し。
【8月】
●環境経営総合研究所(東京)
環境素材メーカー。経済産業省や環境省から受賞するほか、22年度の春の褒章で代表が黄綬褒章を受章するなど多方面から評価されていた。しかし、過去からの不適切会計や資金流出が発覚して債権者から会社更生法を申し立てられた。負債は約246億円。2023年8月期の年売上高は約519億円と公表していたが、実際は約46億円とみられる。