橘玲の世界投資見聞録 2013年5月9日

インドネシア・バリ島の非効率に見るアジアの思想
[橘玲の世界投資見聞録]

 政治・行政制度の混乱や政府資金の配分などさまざまな問題がありそうだが、そのいちばんの理由は効率が失業を生むからだろう。空港と観光地を結ぶモノレールとか、ウブドを循環する小型バスなどを導入すると、空港や路上で客引きをしていたタクシー(白タク)運転手のやることがなくなってしまうのだ。

 もちろん現状でも、1日じゅう客がつかず1銭にもならなかった、ということは多々あるだろう。だがそれでも、仕事をしていることには変わりない。「働いたけれど稼げなかった」のと、「失業してやることがない」のでは、同じゼロ円でも心理的には大きなちがいがある。

 ひとが多すぎる社会では、失業者を増やしたくなければ効率的なシステムをつくってはならないのだ。

ヨーロッパとアジアの人口の違い

 私が人口と効率の関係に気づいたのは、アイスランドを訪れたときだ。人口32万人の最果ての島に、夏になればヨーロッパじゅうから観光客が大挙して押し寄せる。手厚いサービスなどできるはずはなく、すべてを最小限の手間で行なえるようシステム化しなければ社会が回っていかないのだ。

[参考記事]
●金融バブル崩壊後のアイスランドが短期間で奇跡の復活を果たした理由

 システム分析の川島博之氏によれば、ヨーロッパとアジアの人口のちがいは主食となる穀物が小麦か米かで説明できる。

 小麦には連作障害があり、同じ土地で栽培をつづけると徐々に地力が落ちて収量が減ってくる。そこで近世までは、いったん収穫すると翌年は家畜の放牧地などにして、3年に1回しか栽培しないのがふつうだった。それに対して水田には連作障害がなく、温暖な気候なら米はいくらでも育つため、東南アジアでは二毛作はもちろん三毛作も珍しくない。

 私がウブドを訪れたのは3月末だが、稲穂は収穫前で深く頭を垂れていた。灌漑設備さえあれば、米はいつでも好きなだけつくれるのだ。

3月末のバリの水田はすでに収穫時期

 小麦を主食とするヨーロッパでは、食糧が少ないために大きな人口を支えることができなかった。それに対して米文化のアジアは、ゆたかな食糧が爆発的な人口増加を可能にした。とりわけ空気中の窒素を固形化して肥料にする「緑の革命」以降、人口の増加を上回る食糧の増産が可能になり、人類は歴史上はじめて食糧危機から解放された。

[参考記事]
●食糧危機はウソだった! 報道されない"不都合な真実"

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 <執筆・ 橘 玲(たちばな あきら)>

 作家。「海外投資を楽しむ会」創設メンバーのひとり。2002年、金融小説『マネーロンダリング』(幻冬舎文庫)でデビュー。「新世紀の資本論」と評された『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』(幻冬舎)が30万部の大ベストセラーに。著書に『黄金の扉を開ける賢者の海外投資術 究極の資産運用編』『黄金の扉を開ける賢者の海外投資術 至高の銀行・証券編』(以上ダイヤモンド社)などがある。ザイ・オンラインとの共同サイト『橘玲の海外投資の歩き方』にて、お金、投資についての考え方を連載中。

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橘 玲(Tachibana Akira) 作家。1959年生まれ。早稲田大学卒業。「海外投資を楽しむ会」創設メンバーのひとり。著書に『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』『(日本人)』(幻冬舎)、『臆病者のための株入門』『亜玖夢博士の経済入門』(文藝春秋)、『黄金の扉を開ける賢者の海外投資術』(ダイヤモンド社)など。
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