橘玲の世界投資見聞録 2013年5月9日

インドネシア・バリ島の非効率に見るアジアの思想
[橘玲の世界投資見聞録]

 日本にもしウブドのような観光地があれば、空港から高速道路を通し、新幹線の駅をつくり、観光バスや路面電車で名所旧跡を回れるようにするだろう。あるいは過剰に「開発」して、せっかくの観光資源を台無しにしてしまうかもしれない(これはいまの中国で起きていることだ)。

ウブドの街にある木工品店。こんな店がたくさんあるが、いったい誰が買うのだろう?

 もちろん私は、日本が優れていてインドネシアが劣っている、といいたいわけではない。インドネシアは2億3000万人の国民が300の民族に分かれ、600を超えるともいわれる言語を話すモザイクのような群島国家だ。日本とは歴史や文化はもちろん、近代国家としての成立の仕方がまるでちがうし、既得権を打破するのが難しいのはどこも同じだ。交通インフラを整備する必要に気づいても、政治家であれば、タクシーや白タク運転手など「有権者」の雇用をどうするか考えざるを得ないだろう。

 日本はアジア的な村社会を維持しつつ欧米のシステムを導入し、近代化に成功したが、産業が高度化し製造業(ハード)からサービス業(ソフト)に主役が移るようになると、和魂洋才の戦略は行き詰まってしまった。

 日本につづき、台湾や韓国がシステム社会へと離陸し、中国は莫大な公共投資で社会資本を整備している。しかしいまだどこも、日本を超えてシステム化(グローバル化)できたところはない(唯一の例外は英語を公用語とする移民都市シンガポールだろうか)。それ以外のアジアの国々は、いまだシステム化以前にとどまったままだ。

 だが彼らは、いまでは先行したアジアの国々の経験から多くを学ぶことができる。これからの10年で、すくなくとも同じ労働集約型のムラ社会である日本と同じレベルまで社会制度や経済インフラがシステム化したとしてもなんの不思議もない。

 原油、石炭、パーム油、ニッケルなどの天然資源が豊富なインドネシアは、1人あたりGDPが3800ドルと日本の10分の1程度で、国内に2億人を超える潜在的な巨大消費市場を持っている。1997年のアジア通貨危機で金融業が崩壊しIMF管理になった苦い経験から、公的債務の比率は低く金融セクターも比較的健全だ。中国の経済成長に限界が見えはじめたいま、世界の投資家の目がこの国に向けられるのには理由がある。

 インドネシアは、混沌としているからこそ面白い。ここはまだ新興国(エマージング)で、インフラを整備して生産性を上げ、先進国にキャッチアップする余地がいくらでもあるのだ。

バリの伝統舞踏のひとつケチャ。ハノマン通りにあるパダンテガル・カジャ集会所で週3回演じられる

 次回から、ジャカルタ在住で大手人材支援会社JAC Recruitmentで働く長野綾子さんに、そんな“混沌の国”インドネシアの仕事事情を書いてもらうことになりました。ご期待ください。

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 <執筆・ 橘 玲(たちばな あきら)>

 作家。「海外投資を楽しむ会」創設メンバーのひとり。2002年、金融小説『マネーロンダリング』(幻冬舎文庫)でデビュー。「新世紀の資本論」と評された『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』(幻冬舎)が30万部の大ベストセラーに。著書に『黄金の扉を開ける賢者の海外投資術 究極の資産運用編』『黄金の扉を開ける賢者の海外投資術 至高の銀行・証券編』(以上ダイヤモンド社)などがある。ザイ・オンラインとの共同サイト『橘玲の海外投資の歩き方』にて、お金、投資についての考え方を連載中。

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橘 玲(Tachibana Akira) 作家。1959年生まれ。早稲田大学卒業。「海外投資を楽しむ会」創設メンバーのひとり。著書に『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』『(日本人)』(幻冬舎)、『臆病者のための株入門』『亜玖夢博士の経済入門』(文藝春秋)、『黄金の扉を開ける賢者の海外投資術』(ダイヤモンド社)など。
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