安倍晋三首相は、夏の参院選で「憲法改正」を争点にすることを明言した。「日本維新の会」や「みんなの党」も憲法改正に前向きな姿勢を示しており、首相は改憲をめざす勢力で憲法改正に必要な衆参の3分の2の議席確保を目指している。だが、改憲を巡っては各党のいろいろな思惑があり、まとまるのは簡単ではない。

憲法改正を巡る各党の思惑の違い

 自民党は、「憲法改正草案」を発表した。「日の丸を国旗、君が代を国歌と定め、自衛隊を国防軍と位置づける」などの、自民党の従来の主張に加えて、「基本的人権」よりも「秩序」「公益」を優先する条文が追加されたのが特徴だ。

 例えば、「自由及び権利」(第12条)には「責任及び義務が伴うことを自覚し、常に公益及び公の秩序に反してはならない」と加筆された。また、「集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由」(第21条)には「公益及び公の秩序を害することを目的とした活動を行い、並びにそれを目的として結社をすることは、認められない」という条文を追加している。

 自民党は、日本国憲法の基本理念の変更を目指しているといえる。しかし、自民党の連立パートナー・公明党は改憲に慎重な姿勢だ。また、維新の会は石原慎太郎共同代表が自民党に近い、「秩序」「公益」優先の考えであるのに対し、橋下徹大阪市長は「憲法は国家を縛るもの」と主張している。党内は一枚岩ではない。そして、みんなの党は改憲の前に「公務員制度改革」を実現すべきとの立場で、自民党・維新の会との違いを強調している。

 民主党は、相変わらず基本政策で一致できず、党内はバラバラだ。前原誠司元外相ら改憲に積極的な議員がいれば、護憲の社民党らとともに超党派議連を発足させて改憲反対を示している議員もいる。

 結局、安倍首相は国会答弁で、「党派ごとに異なる意見があるため、まずは多くの党派が主張している96条の改正に取り組む」と発言した。まず、憲法改正の発議要件を定めた憲法96条を緩和するという考えを表明したのだ。