オバマを勝たせたセレブ――。

 オプラ・ウィンフリーの最近の形容詞はこれに尽きる。有名テレビ・ホストのウィンフリーが、オバマを推薦すると発表したのは2007年5月のこと。大統領予備選もまだ半ば、オバマの存在もまだそれほど突出していなかった頃のことだ。

 だがその後、全米の都市で演説を行うオバマの横にウィンフリーが立つ姿がたびたびテレビで放映される。それだけではない。個人的にも寄付をした上、ロサンゼルス郊外の17万平米の敷地に立つ豪邸で資金集めのパーティーを主催してハリウッド映画界の大物を招待し、こうしたパーティー1回で軽く300万ドルもの寄付金を集めたと言われている。

 専門家の試算によると、ウィンフリーが推薦したおかげで、オバマは最終的に100万票以上得票を増やした。何と言っても、彼女が毎日午後に登場する「オプラ・ウィンフリー・ショー」の視聴者は604万人を超え、視聴率も全米にシンディケーションされる番組の中では常に5位以内に入る(ニールセン調べ)ほど、彼女の影響力は偉大なのである。

 オプラ・ウィンフリーは一般的に「テレビ・ホスト」と呼ばれるが、実体はもっと大きい。メディア界のモーグル(大御所)、あるいは実業家のほうが近い。ウィンフリーが経営するハーポ・スタジオはテレビやラジオ番組制作、雑誌『O』制作、映画制作を行い、さらにケーブル局のHBOやディスカバリー・チャンネルとの共同制作や合弁会社経営も行っている。

 『TVガイド』誌によると、彼女の年収はなんと3億8500万ドル(約366億円)。フィランソロピストとしての活動も知名度を上げるのに役立ち、ハリケーン・カテリーナ後には、個人資産1000万ドルを寄付して家をなくした人々の住まいを再建したり、アフリカで少女たちの学校を建設したりしている。自らそういうところへ出かけて行って番組を放映し、それがまた支持者をしっかりと捉えるのだ。彼女は今や、世界で数少ないビリオネア黒人であり、もっとも影響力のある女性の一人なのである。

 主婦層に人気のある女性テレビ・ホストと言えば、マーサ・スチュアートの名前が挙がるだろう。だが、スチュアートとウィンフリーの番組は対照的だ。インテリアや料理などスタイル中心で、お高いイメージを演出するスチュアートに対して、ウィンフリーはもっと内面的、啓発型、ヒーリング系である。数年前インサイダー取引で逮捕されて以降、以前ほどの人気が戻らないスチュアートと比べて、ウィンフリーがどんなに富豪でも反発を買わないのは、彼女のそんなスタイルに理由があるのだ。

 ちょっと彼女の番組をのぞいてみよう。