日本に“良薬”となるか?

 カナダで接種された、英グラクソ・スミスクライン(GSK)製の新型インフルエンザワクチンの一部で副作用が相次いだ件である。同社は、複数の州政府に使用停止を要請し、原因を調査中だ。

 あわてたのが、日本政府である。12月に、日本も同じ工場製のワクチン3700万人分(2回接種)を輸入し、来年1月から供給を開始する予定だったためだ。現地に調査団を送り、情報収集するという。

 それは結構だが、今回の騒動で日本はあらためて2つの教訓を得た。

 第一に、国産ワクチン強化の重要性である。そもそも日本は近年、ワクチン開発に消極的だった。副作用で国が訴えられると、ほとんど国側が敗訴してきた経緯や、需要の変動が大きく収益性が低いとメーカー側が敬遠してきたためだ。

 そこへこの新型インフルエンザ騒動である。今年は輸入による穴埋めも仕方がない。だが、国産体制が不十分なままでは、不測の事態に対応できまい。強毒性の鳥インフルエンザが大流行した場合は、どうするのか?

 東京大学医科学研究所感染症国際研究センター長の河岡義裕教授は「パンデミックインフルエンザ対応は、感染者数のピークを低くし、重症者数を減らすことが重要。その一環であるワクチン強化は国防政策として取り組むべき」と強調する。

 第二に、国内データの蓄積・分析の充実だ。冒頭のGSK製ワクチンの場合、17.2万本の接種で通常1~2例の割合で起こる副作用が、6例報告された。わずか0.003%の確率だが、安全性が疑われる特定のロットの調査を公表した。かたや日本では、同種のデータは取れていない。過去、季節性インフルエンザではワクチン接種者の入院者率や小児の死亡者も分析には至らず、今年初めてその体制が構築された。

 上記のような、公衆衛生を守るための仕組みづくりや、そのための組織連携の強化は焦眉の急だ。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 柴田むつみ)

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