透明性を確保し、資産を守る
「4つの鉄則」
では、管理組合はどうすれば、この見えにくい構造的癒着から、自分たちの大切な修繕積立金を守ることができるのだろうか。そこで重要となるのが次の「4つの鉄則」の実践である。
まず、第一の鉄則として、コンサルタント選定において「安さ」だけで決めるべきではない。大規模修繕工事のいわば入り口でもあるコンサルタント選定こそ、最も重要な関門と心得ておきたい。「安さ」を前面に提示された場合も、その裏には何があるのかを冷静に見極め、なぜその価格が可能なのか、納得のいく説明を求める姿勢が求められる。過去の実績、評判、担当者の経験、業務の進め方、そして何より特定の施工会社とのしがらみの有無などを多角的に検証し、信頼できるパートナーを見極めることが肝要だ。
第二の鉄則として、管理組合が主役であるという意識が重要となる。専門家の意見は参考にしつつも、最終的な決定権は自分たちにある、という当事者意識を忘れてはならない。コンサルタントにすべてを委ねるのではなく、どのような修繕を行いたいのか、優先順位は何なのか、といった組合としての要望を明確にし、それをコンサルタントや施工会社に的確に伝える必要がある。業者選定のプロセスにも積極的に関与し、選定基準の策定や候補業者の評価に主体的に取り組むべきである。
さらに第三の鉄則として、なれ合いやしがらみを排除し、プロセスの透明性を高めるには、客観的な視点を持つ第三者の活用を検討すべきだろう。管理組合としては、利害関係のない独立した専門家のサポートを得ることが望ましい。
そうした専門家にアドバイスを仰ぐことは、単に価格の比較に終始するのではなく、設計コンサルタントと施工会社の結託による利益相反を生むリスクのある従来の「設計監理方式」とは異なり、管理組合の要望に基づき各施工会社に技術的な提案と見積もりを求める「プロポーザル方式」の導入を積極的に支援するなど、より透明性が高く、かつ質の高い提案を引き出すプロセス構築に貢献することが期待される。こうした徹底した第三者性は、私たちさくら事務所が常に追求するコンサルティングの根幹でもある。