米ドルは景気循環に沿った下落局面にある。米国ではサブプライム問題で、住宅部門の調整に株価の下落が加わり、個人消費も鈍化しそうだ。米経済成長率は来年前半に1.5%に落ち、堅調な世界需要や政策対応を受け、年後半に2%台前半に持ち直すと想定してきたが、もう少し下振れるだろう。

 ドルは米景気減速、利下げ過程で下落しやすい。その後景気回復しても、利上げが数回行なわれるまで下方リスクが残る。このパターンからすれば、ドルが上昇軌道に戻るのは来年後半でも難しい。

 景気下降局面のドル安圧力は、マネーの流れに表れる。米国は巨額の経常赤字を海外からの投資や借り入れで埋め合わせる必要がある。しかし景況が悪化すると、海外勢の対米投資意欲は減退する。

◎外国人の対米証券投資
外国人の対米証券投資
※6ヶ月移動平均
出所:ブルームバーグ

 上の図では確かに、外国人の投資が最近減っている。しかも、近年は国債以外のシェアが上がっていて、サブプライム問題で信用市場が麻痺すると、海外からの借り入れはいっそう厳しくなる恐れがある。

 じつはここ10年、経常不均衡は世界的に拡大している(下図参照)。

◎主要国の経営不均衡の推移(対GDP比)
外国人の対米証券投資
出所:OECD