アベノミクスは、「将来に対する人々の期待が好転すると、実体経済活動もそれに引かれて好転する」という効果を狙っているとされる。

 2012年の秋以降円安が進展し、これによって企業利益が増加したため、株価が上昇した。今後は、設備投資や雇用が増加するという。では、こうした効果は、本当に働くだろうか?

 6月3日に公表された財務省の法人企業統計は、円安がかなり進んだあとの13年1-3月期の企業活動について、詳しい姿を伝えてくれる。このデータは、期待による経済活性化効果が本当に生じているのかどうかを検証するために、きわめて重要な情報となる。

 以下で述べることを要約すれば、つぎのとおりだ。一部の輸出産業では円安によって利益が増大したが、それは売上増を伴わないものだった。輸出産業であっても、輸入原材料が多い産業では、1-3月期の利益はかなり大きく減少した。

 また、売上が増加していないため、円安のメリットを直接に享受できない小企業では、利益は著しく減少した。

 将来の生産増を期待することができないので、企業の設備投資は、減少を続けている。つまり、最も重要な期待メカニズムは、現実の経済では働いていないわけだ。

輸出産業では、円安によって増益

 法人企業統計によると、2013年1-3月期の全産業の経常利益は、対前年同期比6%増となった。営業利益は、対前年同期比2.4%の増だった。

 一方、売上高は、対前年比で5.8%ほど減少している。対前期比でも、増収に転じたとはいえ、1.8%しか増加していない。